5大栄養素といえば、たんぱく質、脂質、炭水化物にビタミン、そしてミネラルです。ビタミン・ミネラルはサプリメントも多く発売されていますね。
この中で最も地味な栄養素といえば…ミネラルでしょうか…?
エネルギーにはならないても、ビタミンとともに体の調子を整えてくれる必須の栄養素ミネラル。
『ミネラルの摂取に気をつけています!』って人はなかなか聞きません(苦笑
ビタミンとともに体の調子に直結するだいじな栄養素なのですが。
サプリは甘え?ビタミン全種類の効果(過剰摂取、欠乏症)と正しい摂取法を解説してみる
今回はビタミンに続いて、ミネラル全16種類の基礎知識(効果、過剰摂取・欠乏症、含有食品)についてまとめました。
サプリメント摂取時の注意や、ビタミンとの違いについても解説していきますので是非ごらんください。
【参考】農林水産省/みんなの食育、厚生労働省/日本人の食事摂取基準、栄養学の基本がまるごとわかる辞典(2015,西東社)、栄養成分表2015、その他学術論文など
ミネラルの基礎知識
ビタミンとミネラルの違い
ビタミンもミネラルも『エネルギーにはならないが、体を整えるためにに必須の栄養素』という意味では同じです。
化学的に見れば、このうち、炭素を含む有機物がビタミン、炭素・酸素・水素・窒素を除く体内の構成元素(金属など)がミネラルです。
ビタミンは、細胞や脂肪を合成、分解する酵素の働きをサポートする『補酵素』として働くものが多いです。
ミネラルは補酵素として働くこともありますが、細胞や血液の浸透圧を調整したり、カルシウムやリンのように骨や細胞の構成成分になるものが多いです。
ミネラルの種類と特徴
ミネラルはヒトの体内に含まれる量によって『主要ミネラル』と『微量ミネラル』に分けられます。多量ミネラルや微量元素などと呼ばれることもあります。
カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、イオウなどが主要ミネラルにあたります。ミネラルとしてよく聞く成分ばかりでしょう。
主要ミネラルの1日の目標摂取量は数百mg〜数g程度です。
ナトリウムや塩素も主要ミネラルに分類されますが、不足よりも塩(塩化ナトリウム)による過剰摂取がピックアップされますね。普通の食生活で欠乏することはありません。
微量ミネラルは1日に数mg〜数十mg必要な鉄、亜鉛、マンガン、銅、そして、数μg〜数百μg摂取したいヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルトが挙げられます。
ミネラルの主な機能
主要ミネラル7種類の機能
主要ミネラル | 機能 |
ナトリウム | 神経伝達に関与。血液の浸透圧の維持に必須。 |
カリウム | ナトリウムとともに血液の浸透圧維持に関与。心臓や筋肉の機能調節など。 |
リン | 骨や歯の形成、糖代謝によるエネルギー生産に関与。DNAの必須元素。 |
カルシウム | 骨や歯の形成、神経伝達に関与。 |
イオウ | 皮膚、髪、爪、一部のたんぱく質の構成元素。 |
マグネシウム | 骨の形成、身体中の代謝を促す酵素反応に必須の元素。 |
塩素 | 胃の消化液(塩酸)の成分。体内の水分量やpH調節にも作用。 |
いずれも非常に重要なミネラルです。
ヒトの体内に最も多く含まれるミネラルはカルシウム、そしてリンです。骨の主成分がリン酸カルシウムであることに加え、リンはDNAの構成成分であることが理由です。
カルシウムは骨の形成だけではなく、血中の電解質濃度の調節にも作用しています。血中のカルシウム濃度が増えると骨として吸収し、逆に欠乏時には血中にカルシウムが放出されます。
ナトリウム、カリウムのバランスは血中の浸透圧調整に必要です。
また、ナトリウム、カリウムイオンによる電位差によって神経伝達が成り立っています。
簡単に言うと『痛い』『熱い』『触れた』といった感覚は全て、ナトリウムイオン、カリウムイオンによる情報伝達が担っているのです。
マグネシウムは体内で約300種類の酵素反応を促進するミネラルで、欠乏症になると体全体の機能が低下します。
不足すると血管へのコテステロール沈着や心疾患などの成人病も引き起こすため、食事やサプリメントからしっかりと摂取したいミネラルです。
硫黄はたんぱく質を形成するアミノ酸のうち、メチオニンとシステイン(含硫アミノ酸)に含まれます。
10分でわかるアミノ酸の栄養学!良質なたんぱく質の選び方とは
体中のたんぱく質に含まれますが、これらは特に毛髪や皮膚、爪にとって重要なアミノ酸で、不足すると皮膚炎や肌のシミ、毛髪の抜けなどを引き起こします。
健康と美容に重要なミネラルですね!
微量ミネラル9種類の機能
微量ミネラル | 機能 |
鉄 | 赤血球(ヘモグロビン)や筋肉(ミオグロビン)の必須成分。 |
亜鉛 | たんぱく質の合成、細胞分裂を促進。 |
銅 | ヘモグロビン、コラーゲンなどの合成に関与。一部の酵素反応を促進。 |
ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの成分で、発育、基礎代謝を促進。 |
セレン | 抗酸化作用を持つ。体内の過酸化脂質を低減し、老化を防ぐ。 |
マンガン | 糖、脂質、たんぱく質の代謝を促進。骨の成分。 |
モリブデン | 尿素、プリン体などの代謝、造血に関与。 |
三価クロム | 糖、脂質代謝の促進。インスリンの機能調整。 |
コバルト | ビタミンB12とともに作用し、貧血の防止などに作用。 |
鉄と銅は血液、造血に必須のミネラルです。
血を舐めると鉄の味を感じますが、これは赤血球の主要成分であるヘモグロビンに鉄が含まれるからです。
銅はそのヘモグロビンの合成に必須なミネラルです。モリブデンも鉄の利用効率を上げるミネラルとして造血に関与します。
亜鉛は体中の様々な酵素反応を促進し、代謝を促す大切なミネラルです。
味覚異常や抜け毛、肌荒れの防止など、たんぱく質の機能維持、細胞の新生を促します。
セレンは抗酸化作用を持ちますが、細胞の老化を防ぐ機能という意味では亜鉛に似ていますね。
亜鉛は精力剤のイメージが強いかもしれません。これは亜鉛が性ホルモンの合成、精子の生成を促進することが理由です。
甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素など、ホルモンバランスの調整もミネラルのはたらきの一つです。
マンガンやクロムは糖や脂質の代謝に必須のミネラルです。エネルギー生産に関わるため、欠乏すると疲れやすくなりがちです。
クロムは自然界では三価クロムと六価クロムという形で存在しますが、三価クロムは必須ミネラルであるものの、六価クロムは環境汚染を引き起こす有害物質となります。原子状態が違うだけで、全く違う機能を持つようになります。
ミネラルの過剰摂取と欠乏症
野菜から肉類、豆、海産物など、様々な食品をバランスよく食べていればミネラルの過剰摂取も不足も心配ありません。
ただし、日本人の食生活では、過剰摂取しやすい、あるいは不足しやすいミネラルがあります。
ミネラルの過剰症、欠乏症を簡単にまとめました。
主要ミネラル | 過剰症 | 欠乏症 |
ナトリウム | 高血圧、癌、動脈硬化など | 食欲不振、疲労 低Na血症など |
カリウム | 過剰分は排泄 腎不全だと不整脈など | 血圧上昇、不整脈、心不全 排尿異常など |
リン | 副甲状腺異常、Ca吸収異常など | 骨軟化症、腎結石 子供の発育不良など |
カルシウム | 特になし。臓器不全などから高カルシウム血症 を引き起こすと悪心や嘔吐、腎不全など。 | 骨粗鬆症、イライラ、動脈硬化 子供の発育不良など |
イオウ | 特になし。一部の含硫化合物は有害。 | 皮膚炎、しみ 毛髪の発育不良など |
マグネシウム | 高Mg血症による吐き気、血圧異常など | 不整脈、心臓発作 コレステロールの沈着など |
塩素 | 特になし。一部の塩化物は有害 | 胃酸酸度低下による 食欲不振、消化不良など |
微量ミネラル | 過剰症 | 欠乏症 |
鉄 | サプリ等による超過剰摂取で 鉄沈着による臓器不全など | 貧血、食欲不振など |
亜鉛 | 頭痛、吐き気など | 味覚異常、脱毛、肌荒れなど |
銅 | 急性中毒、ウィルソン病 | 心臓や血管の機能低下 関節不調や骨粗鬆症など |
ヨウ素 | 甲状腺異常、機能障害 | 甲状腺腫、疲労 子供の発育不良など |
セレン | 肌荒れ、脱毛、嘔吐など | 老化促進、発がんリスク上昇 |
マンガン | 食欲不振、運動失調など。 | 疲労、インスリン合成異常 による糖尿病誘発など |
モリブデン | 銅欠乏症、脱毛症など | 貧血など |
三価クロム | 腎機能障害など | 動脈硬化など |
コバルト | 甲状腺機能低下など | 貧血など |
ナトリウム以外のミネラルは基本的に過剰摂取しにくい栄養素です。
ただし、サプリメントなどで一気に摂取すると中毒症状を起こす可能性があります。
次章では、日本人の食生活で過剰摂取になりやすい、または不足しやすいミネラルに絞って解説していきます。
比較的過剰に摂取しやすいミネラル
ナトリウム
ナトリウムは塩化ナトリウムとして『食塩相当量』で摂取基準が決められています。
30歳男性で1日8g、女性で7g未満が目標とされており、最低摂取量は決められていませんが、これは通常の食事でナトリウムが不足することはないからです。
カップラーメン1杯でも約4gの食塩を摂取してしまいます。
塩分ではなく、だしや香辛料、酢やゴマ、ハーブなどで味付けする習慣をつければ、ナトリウムの過剰摂取を避けられます。
摂りすぎたナトリウムは尿として排泄されますが、慢性的な過剰摂取が続くと、動脈硬化、ガン誘発、高血圧など、あらゆる生活習慣病の原因になるミネラルです。
ただし、熱中症や激しいスポーツ、下痢など、急激な発汗時は欠乏します。
水分補給には適度に塩分を含むドリンクを選びましょう。
水分補給にベストな飲み物とは?熱中症対策に役立つ『水分』の基礎知識
セレン
セレンも重要なミネラルですが、他のミネラルと比べて目標摂取量と過剰量の差が小さいため、サプリメントの摂取などにより過剰摂取しやすいミネラルです。
目標摂取量は成人男女ともに30μg/日ですが、耐用上限量、すなわち毎日継続して摂取すると身体に影響がでる可能性がある量は、男性が280μg/日、女性が220μg/日です。
なお、妊婦はこれに+5が目安となります。
カレイ(66μg/100g)やイワシ(94.5g/80g)や帆立貝といった魚介類や穀類、ネギなどに豊富に含まれ、普通の食事で不足することはまずありません。
過剰症になることは少ないですが、マルチビタミンなどの過剰摂取はセレン中毒を引き起こす可能性があるので注意しましょう。
ヨウ素
ヨウ素は不足、過剰どちらの状態でも甲状腺に異常を招きます。
ヨウ素の摂取推奨量は成人で130μg/日で、過剰量(耐用上限量)は3000μg/Lです。
比較的幅が広いため、特に意識しなくても不足、過剰になることはまずありません。
海藻、魚介類に豊富に含まれ、特にずば抜けて昆布(1590μg/1g)に多く含まれます。
次点でわかめ(380μg/5g)、いわし(260μg/80g)などが上がりますが、昆布がダントツですね。
そのため、出汁をとったスープなどを日常的に摂取していれば、ヨウ素不足になることはありません。
昆布でダシをとったとしても、ヨウ素が全量抽出されるわけではないので問題ありませんが、日常的に昆布をそのまま食べていると過剰症になりやすいでしょう。
子供の発育にも必須のミネラルですので、適量をしっかり摂取しましょう。
欠乏しやすいミネラル
カルシウム
カルシウムの目標摂取量は成人で700mg/日程度ですが、日本人の平均摂取量はこの値を下回り続けており、日本人は慢性的なカルシウム不足と言えます。
干しエビ(7100mg/100g)や、カニ、いわしなどに多く含まれますが、カルシウムは吸収率が食品によって異なるため、食べ方にコツがいります。特に、小魚や野菜からのカルシウム吸収率は20〜30%と低いです。
カルシウムは酸に捕捉される(錯体という)ため、クエン酸や酢などの酸性食品と一緒に食べることで吸収率を高められます。酢の物や南蛮漬けなどは良い組み合わせですね。
たまに焼き魚に添えられているレモンなんかも素晴らしいですね。ただの飾りではありません。笑
他にも、大豆や乳製品などに含まれる良質なタンパク質や、ビタミンDがカルシウムの吸収を促進します。
カリウム
細胞はナトリウムとカリウムのバランスで成り立っており、ナトリウムと対になって語られるミネラルです。
野菜や果物、海藻や豆類など、様々な食材に含まれていますが、調理、特に煮る過程で流出しやすいミネラルです。
カリウムはナトリウムの排出を促進することで血圧を下げるため、カリウムの摂取量が足りないと高血圧になりやすいです。
また、夏場は発汗などによって低カリウム血症になることがあります。ミネラルウォーターなどで不足分を補いましょう。
カリウムの働きを促すためには、ナトリウムの過剰摂取を避けることも必要です。
カリウム自体は様々な食品に含まれるため、塩分摂取に注意してレシピを作りましょう。
マグネシウム
腎臓に障害がなければ、過剰分は尿から排出されるので過剰摂取の心配はほとんどありません。
身体中の酵素反応を助ける大切なミネラルで、不足すると様々な部位に不調をきたします。
不足すると不整脈や心臓発作を起こしやすく、コレステロールの沈着や高血圧など、血管系の異常も促します。
海藻、豆類に多く含まれますが、肉類や牛乳には少ないため、和食が減っている昨今では不足しがちのミネラルです。
穀類にも豊富ですが、精製工程で除かれる外皮に多いため、玄米や全粒粉の小麦などを選びましょう。
鉄
赤血球の主成分であるヘモグロビンが酸素を運ぶのに必須の鉄。
食品からの吸収率が低く、特に植物性食品は非ヘム鉄という状態で存在するため、吸収率は数%になります。肉や魚には、ヘム鉄という吸収率が比較的高い状態で含まれます。
鉄分はレバーや海苔、あさりなど、意識しないと食べない食材に多く含まれるため、不足しやすいミネラルです。
おわりに
ミネラルは野菜や魚介類、肉類など様々な食材に含まれていますが、白米や小麦粉など、精製された原料を使っている食品ばかり食べていると不足しやすくなります。
クリーム玄米ブランや、発芽玄米など、あえて素材を精製しない食材は、実はミネラル摂取に最適なのです。最近はこういったビタミンやミネラルをバランス良く含む完全栄養食も登場しました。
不足している栄養素をサプリメントで補給するのは良いですが、なるべくなら『食材』から取りたいところ。
みなさんも一度自分のレシピ作りを振り返ってみましょう!それでは。