学歴ロンダリングは本当に悪いこと?メリットや就職のリアルを徹底解説

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新卒一括採用が続く中、まだまだ就活の成功と”学歴”は切っても切れない関係になっています。
『学歴差別しません!』という企業も増えていますが、その多くは綺麗事…
説明会の時点で採用フィルターをかけたり、書類で足切りしたり…いまだに学歴が新卒採用のハードルとなっているのが現状です。
それはいわゆるFラン、低学歴と呼ばれる多くの学生がリアルに感じていることでしょう。

となると、やはり誰でも『楽して学歴を手に入れたい』と考えるはず。
特に理系研究職の新卒採用では、学歴がモノを言う世界です。

よく議論されるのが大学院試験を使った『学歴ロンダリング』の是非。
文系ではこの言葉になじみがないかもしれません。

良い面、悪い面、どちらもピックアップされやすい学歴ロンダリングの世界。
今回は、実際に大学よりレベル(偏差値)の高い大学院に進学した人へのインタビュー、そして採用担当の経験もある筆者の企業目線で見た学歴ロンダリングという視点で書いていきたいと思います。

学歴ロンダは悪いことなの?
メリットやデメリットは?
就活で役に立つの?

こういった疑問を持つ学生に向けた『答え』を解説していきましょう。

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学歴ロンダリングとは|メリット・デメリットを解説

学歴ロンダリングとは、大学生がよりレベルの高い別の大学院に入学し直すこと、それにより最終学歴をよく見せることを指すネットスラングの1つです。
大学入試よりハードルの低い院試で最終学歴を”リセット”し、就職活動で良い扱いを受けてやろう…
いわば『楽して甘い蜜を吸おうとしている』というようなイメージがつきものです。

もちろん良い研究環境を求めたり、事情があって他大学の大学院を受験する人も大勢います。

より高いレベルの大学院に行くこと=学歴ロンダリング=悪いこと

短絡的にまとめられがちですが、『よりレベルの高い学習環境へチャレンジすること』は決して悪いことではありません。むしろ意欲的だと評価されるべきです。
そうでなければ、大学側から見ても他大学の学生を受け入れるメリットがありませんからね。

この章では、院試と学歴ロンダリング、他大学受験のメリットなどについてまとめます。

 

新卒採用や研究環境を考えればメリットしかない

現状の新卒採用制度なら、学歴ロンダリングは学生にとってメリットしかありません。

  • 新卒向け就活サイトでは大学院の学歴で登録できる
  • 上位大特有の学内推薦が利用できる
  • 教授のコネクションや研究室OBのパワーが強い

選考を通して内部生と同等に評価されるかは学生次第ですが、選考のスタートラインに立てる確率が段違いになります。

また、就活だけではなく、上位国立大は研究費が潤沢かつ実験機器も揃っており、高度な研究ができたり、研究結果を出しやすい環境が整っています。

みるおか
良い研究室に進めば、上っ面の学歴だけではなく、しっかりとした『実績』も出しやすくなります。学生から見れば”メリットしかない”と言っても過言ではないでしょう!

 

大学院試験は『ちゃんと勉強すれば』難しくない

こちらの記事で詳しく解説していますが、院試は、

  1. 試験科目と試験範囲をチェックする
  2. 試験科目に合うテキストで学習する
  3. 英語(TOEIC)で一定以上のスコアを取る

というプロセスでしっかり勉強すれば、たとえ東大であっても合格難易度はそこまで高くありません。
受験大学院の講義で使われているテキストを使用し、基本内容をしっかり覚えれば十分な試験です。

これは、大学院試験は大学受験のように『学力上位を選抜する』テストではなく『基本レベルを満たしているか確認する』ためのテストだからです。
院試は簡単だ!という議論がありますが、そもそも試験の性質、目的が違うため本来比較すべきではないのです。

ただ、英語だけはどうしても避けて通れないので、下記の記事を読んでしっかり勉強しておきましょう。

 

【前提】内部進学と学歴ロンダはそもそも同等に見られない

学歴ロンダリングというと悪いイメージかもしれませんが、学生側からみると、

『偏差値の高い大学院に入ったし、就職で優遇されるかな…?』

という所が気になる所でしょう。

例えば、MARCH理系→旧帝大理系大学院の場合、新卒採用では”MARCH学部卒”として評価されるのか…それとも”旧帝院卒”として評価されるのでしょうか。
結論から言うと、どちらでもありません。
企業は『MARCHから旧帝に進学した学生』として評価します。

旧帝学部&院卒>MARCH学部→旧帝院生(学歴ロンダ生)>MARCH学部&院卒

学歴で見ればこの序列は変わらないからです。

大学受験の方が大学院受験より難易度が高いことは企業も理解しています。
ただ、レベルの高い大学院に合格することは、大学での専攻をしっかり学習している証明でもありますから、もちろん評価はされます。
そのため『内分進学ほどではないけど、学習意欲や地頭の良さは評価する』というのが落とし所になるわけです。

ただし、これはあくまでも大学院卒がメジャーな理系での話。
文系での大学院進学は珍しく、就職失敗の”保険”として行く人も多いですから、学歴よりも院進した理由づけが重要です。

 

【注意】学歴ロンダリングにもリスクはある

環境が変わるということにはリスクが付きものです。

  • 入った先がブラック研究室&教授が厳しい
  • 新しい土地の生活に馴染めない
  • 研究内容がハイレベルすぎてついていけない

一度環境がリセットされるわけですから覚悟は必要です。
学歴は簡単に手に入っても、2年間の研究室生活は予想以上にハードなものです。
高学歴と引き換えに適応障害になってしまっては元も子もありません。

研究室訪問や研究内容など、事前調査はしっかりと済ませておきましょう!

 

優秀な学生の流出に泣く教授たち

一瞬でこりゃあかんとおもった。毎年4月に多量の4年(回)生。助教とれない。学生に毎年ピペットマンから教えてる。だれも大学院にいかない。意欲のある出来る子は上位の大学院に進学。毎年毎年これ、日々の雑務に疲れ気づいたらノーペーパー。もう研究費もとれない。もうどこにもいけない。

-Twitter:muffmuff (@muffmuff5)

学歴ロンダリングで明らかな『デメリット』を受ける場所があります。
ロンダリング”される側”の大学です。

このツイート主は元日本の大学でアカデミックの世界にいた方ですが、現在はアメリカでポスドクに就いているとのこと…
優秀な学生を奪われる側の大学は、学生の質、研究力の低下につながります。

上位国立ではバイオ系の大学院進学率が100%近いところもありますが、これは研究職などのキャリアパスが拓けているから。
中堅私立以下では、大学院の進学率が30%未満のところも多いです。
研究人材が確保できないだけではなく、優秀な学生ほど院試で抜けてしまうと…

魅力的な研究内容、研究環境やキャリアにつながる何かがないと、大学院も搾取する側とされる側に分かれてしまいますね。

 

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こんな人は大学院で学歴ロンダすべき

まず『環境の変化に適応できる』というのが大前提!
そこに加えて、学歴ロンダのメリットを享受できるのはどんな人なのかこの章で解説していきます。

 

専攻 or 研究室を変えたい学生

高校生が大学受験で学部を選ぶときは『なんとなく』『就活に有利そう』『得意、好きだから』で決めることが多いでしょう。

しかし、大学4年間を過ごすと、その学問の将来性や可能性、キャリアパスなどがだんだん分かってきます。
それとともに、

『あれ…専攻間違えたかな…』

と感じることも。
例えば、高校生で生物工学と生命科学の違いを理解して大学を決める人なんてまずいないでしょう。

この記事でも書いているように、理系では専攻によって職種から業界までキャリアの選択肢が大きく変わります。
学歴だけではなく”専攻”や研究室をリセットできることも学歴ロンダの大きなメリットです。

自分がやりたいことを突き詰めるため…

他の大学院へ行くことの本質はココにあります。
『今の大学じゃできないこと』を追求する積極性は、どこでも評価されますし、学歴ロンダリングの悪いイメージも吹き飛ばせるはずです。

 

学歴と実績と研究環境を改善|バイオ系研究職を目指す学生

もし、あなたが本気で研究職を目指している場合、学歴がMARCHなどの中堅私立以下、かつバイオ・生物専攻なのであれば積極的に学歴ロンダリングを狙っていくべきです。

僕が大学院に進学したのは『(企業の)研究職に就きたいから』という理由1点です。
ある程度の規模がある食品や製薬メーカーの研究開発職を志望するなら、そもそも修士卒が応募条件であることがほとんどです。
よほど光る人材でない限り、旧帝・東工大などの上位国立、少なくとも早慶クラスの院卒でなければ足切りされるレベルです。
前章の通り、バイオ系の企業研究者は超狭き門です。
学歴で足切りし、その中からさらに優秀な学生を選んだとしても十分な数ですからね。

理系大学院生のリアルな就活とは!就職できない専攻と博士の闇を暴露してみる より

化学、機械系では求人も多いですが、生物系の研究職(食品や化粧品、製薬など)は本当に狭き門です。
もちろん上位大から研究職になれる人もいますが、それは本当に優秀なごく一部…
優秀かどうかに関わらず”スタートラインに立てない”という事態を防ぐには、学歴ロンダリングは有効です。

 

とにかく環境を変えたい!アカハラにあっている学生

教授からの罵倒がひどい、徹夜の実験ばかりなど、いわゆる”ブラック研究室”に所属する学生もいます。
研究室生活でメンタルを病んでしまい、鬱になってしまう人も。

『でも研究室を辞めると論文が書けないし、大学院には行きたいし…』

院試は、そんな人が環境を変えるチャンスでもあります。
同じ大学内で研究室を変えるくらいなら、よりハイレベルな研究環境を求めるのもアリ!
ただし、何度も言いますが研究室見学でしっかりと見極めておきましょうね!

 

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【実体験インタビュー】他大学院進学後はうまく行ってるの?

ここでは、理系とーく|理系ライター集団による科学メディアという理系サイトでライターを担当している方の中から、実際に別の大学院へ進学した人にインタビューして見ました。
大学院を変えた理由や、進学後のリアルな生活、学歴ロンダリングという言葉について考えることなど…
これから他大学院へ進学する人はぜひ参考にしてください。

 

研究テーマに魅力を感じて大学院を変えました(みしぇるさん)

みしぇるさん(@micheel_008)は大学に学びたい研究テーマがなかったために、他の大学院に進学したそう。
期待と現実のギャップはどうだったのでしょうか。

みるおか
どんなことを期待して他大院に進みましたか?

ーもともと所属していた大学には興味のあるテーマがありませんでした。
また、博士課程まで視野に入れていたので、博士への進学実績が多いこと、学会発表や論文執筆の経験を積めるかどうかもチェックしていました。

みるおか
なるほど…博士課程まで進学する学生は教授も喜びますからね。実際どんな感じでしたか?

ーまず、研究室で所有している機器の数が圧倒的でした。
研究機器が充実していると研究の幅も広がりますからね。
また、現在の研究室では過半数が博士課程に進学しています。博士課程に進学する学生は修士課程から実験をかなり頑張っており、日々のディスカッションからも良い刺激をもらっています。

みるおか
研究が充実してると!ぶっちゃけですが『学歴ロンダリング』についてはどう思いますか…?

ー学歴ロンダってあまり良い意味で使われないですよね…。
学歴を詐称しているわけではないのに、悪いイメージが付きまとうことに疑問を感じます。
確かに、大学受験で第一志望に合格できず。そのリベンジで受験するというイメージが強いのかもしれません。
しかし、実際は研究のために自分の興味に従って所属を変える人が多いので、今後より良いイメージの言葉ができてくれればいいな、と思っています!

 

「井の中の蛙が、激流の川に飛びこんだ」(takashiさん)

化学系薬剤師takashiの薬学科学講座を運営するtakashiさんは、当時偏差値50~55程度(現在はボーダーフリー)の大学でから、名古屋大学大学院の化学系研究室に進学されました。
なかなか苦労された様子ですが、果たして…

みるおか
いわゆる”外部生”になりますよね。研究室ではうまくコミュニケーション取れましたか?

ー田舎から都会の大学にやってきたので、「プライベート交流が薄いなぁ…」と感じることはありましたが、研究室ではみんな優しくフレンドリーで、メンバーには恵まれていたと思います。

みるおか
苦労したこととか…

ーやはり、研究のレベルが桁違いでした…
内部からM1になった学生は、4年生の時から1年間やってきているので、かなりのレベルになっています。でも外部生はまたゼロからのスタートですからね。
外部生は、不利な状況で院試を受けているので、内部生より教科書の知識はあったりしますが、総合的な研究力は内部生が圧倒的でした。
初めの一年はほんとにボロボロでしたね。よく怒られ、何度か折れそうになりましたね。

みるおか
理系だと鬱になる人もいます。よくメンタルが持ちましたね。

ーそんな状況でも、教育熱心で経歴で差別しない教授だったので、助かりました。不当な扱いを受けることはありませんでした。
ただ「外部生だとこんなレベルか」とは思われていたかもしれませんね…
一言で表すと 「井の中の蛙が、激流の川に飛びこんだ」という感じでした。
その激流を優雅に泳ぐ先生方は、私を見捨てずにしっかりと泳ぎ方を教えてくださいました。
私はほんとにいい指導者に恵まれたのかもしれません。

みるおか
井の中の蛙…転職でもありがちなパターンです。takashiさんはしっかりステップアップできたようで良かったですね!

 

博士進学も視野に入れて(しずくさん)

研究者の卵ゆるふわブログを書かれているしずくさんは、某私大から、東大をはじめ、東工大や医科歯科大の大学院などにも合格されています。
学部での研究室がかなり悪い環境だった様子…院試を経てどう変わったのでしょうか?

みるおか
なぜ他大の院を受けることに?

ーとにかく研究室がひどかったからです…
指導放棄や人間性の否定など、教授のアカハラがひどかったんですよね。さらに指導力もなく、上級生も下級生を指導放棄していました。
そのため、もっと良い環境と指導を求めて大学院を変えました。
博士課程進学も視野に入れていたので、

  1. 博士課程進学時にも経済的自立のできる奨学金(学振)が取れやすいこと
  2. 指導、教育がきちんとされていること
  3. 教授が有名かつ、人間的に尊敬できること
  4. 上級生が下級生の面倒をしっかり見てくれる環境があること
  5. 研究資金が潤沢であること
  6. 研究内容が面白そうなこと

を期待していました。

みるおか
アカハラ…院生時代を思い出します/(^o^)\ それはさておき、研究室のチェック項目としては満点ですね!リアルはどんな感じでしたか?

ーこれは研究室によると思いますが、差別などはありませんでした。
ただ、内部生と比べると入った頃は実験結果がないので、すぐに学会などは出られないことが悔しいですね。内部生はM1の5月には学会に出ていましたから…
たまたま私の教授も地方国公立大学から上りつめた人なので、学歴云々よりも実力を見てくれています。もちろん、研究もしっかりとディスカッションに乗ってくれますよ。

みるおか
良い環境が見つかって良かったですね!最後に『学歴ロンダリング』について思うこととかありますか?

ー私は大学よりも偏差値の良い大学院に行くことはある種の昇進だと思っています。
この昇進は本当に自分で色々な情報を集めて、自分で努力して、勉強しないとできるものではありません。
ですので、学歴ロンダリングした人は十分評価に値する人だと思っています。

さらに、合格することはもちろんのこと、合格した後の方が正直大変です。
ただ、大学院試験も合格するということは、この大学院でやっていける力はあるということの証明だと思います。
周りから学歴ロンダリングなどと嫌味な感じで言われたとしても、自分は合格大学の大学院生なんだと自信を持っていれば良いと思います。
そもそも海外に目を少し向けると学歴ロンダリングは普通に行われています。
大学を東大でそこから世界ランキングの高い大学院に行く人はたくさんいます。
そういう人たちも学歴ロンダリングと呼ぶでしょうか?
学歴ロンダリングという言葉は日本で生まれたある種の『出る杭は打たれる』的な言葉なんだなあと最近特に思いますね。

みるおか
ありがとうございました!インタビューはここまで。他大院進学のリアルが垣間見れましたね…
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おわりに

学歴ロンダリングというと悪いイメージですが、

『よりハイレベルな環境と経歴を求めること』

と言い換えれば何も悪いことはありません。
個人的には、むしろこういう力強いスタンスは、アカデミック、企業人関係なく、社会人としてお金を稼いでいくなら持っておきたいマインドだと感じます。
雇用が流動的になりつつある現代では特に…

就職だけで見ても、企業人は少なくとも学歴ロンダリングと言われる行為にマイナス評価をつけることはまずありません。
研究者としてのキャリアを考えるなら、大学院の選択肢を柔軟に考えても良いのではないでしょうか。それでは!