10分でわかるアミノ酸の栄養学!良質なたんぱく質の選び方とは

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  • ダイエットや筋トレ中の人は、糖質と脂質を抑えたタンパク質中心の食事を好みます。
    ささみ低脂肪ヨーグルトなどが人気ですね!サプリやプロテインを活用する人も多いでしょう。

完全栄養食で有名なCOMPは、糖質・脂質・タンパク質のカロリーバランスも良く整えられています。

 

『ヘルシーな食品』イコール低糖質、低脂質、高タンパクという印象が強いでしょうか。
適度な糖質、脂質はエネルギー生産に必須ですが、デザートやラーメン、ジャンクフードなど…現代社会における『人気の味』は砂糖・塩・脂肪リッチなものが多いため、『高タンパク』を意識するのは健康維持に効果的です。

では、何をもってタンパク質を『ヘルシー』とするのか…
良質なタンパク質を食べられるレシピはどう作れば良いのか…
それにはタンパク質を構成する『アミノ酸』を知る必要があります。

今日は『アミノ酸の栄養学』をかんたんに説明した後、BCAAなど話題のワードの正体や、タンパク質中心のレシピ作りについて、まるっと解説していきます。

【参考資料】基礎栄養学(南江堂)、ニュートン別冊食品の科学知識、最新「栄養学」(中央法規)、七訂食品成分表2017、The Protein Digestibility–Corrected Amino Acid Score(J.Nutr.2000)など

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たんぱく質の基礎知識

まずはたんぱく質の基本。
栄養やトレーニングに興味のある人にとっては常識ですが、基本事項をおさらいましょう。

たんぱく質とペプチドとアミノ酸

たんぱく質は『アミノ酸が数千以上つながり、生体内で機能を持つ化合物』を指します。
アミノ酸という化合物がたんぱく質の最小単位となります。

連結したアミノ酸の数が2〜数十個と少ない場合はペプチドと呼びます。
さらに数が多くなるとポリペプチドと呼びますが、アミノ酸の数と名称についてはっきりした基準はありません。1

生物はたんぱく質を消化器官で分解して、アミノ酸や小さいペプチドの形で吸収します。
腸内細菌などが生産する特定のペプチドは免疫を活性化するという報告もあり、その機能性が各研究機関で調査されています。2

たんぱく質が機能を維持するためには、全てのアミノ酸が同じ数、同じ配列でつながる必要があります。
この数万のアミノ酸配列を1つも間違わないようにコントロールするのが『遺伝子』です。
遺伝子はたんぱく質のプログラミング言語とイメージしましょう。

 

必須アミノ酸と非必須アミノ酸

必須アミノ酸
トレオニンメチオニンリシン
ヒスチジンフェニルアラニントリプトファン
バリンロイシンイソロイシン
非必須アミノ酸
グリシンアラニンプロリン
セリンシステインアスパラギン酸
グルタミン酸アスパラギングルタミン
アルギニンチロシン

遺伝子がコードするアミノ酸は全20種類です。
このうち、人が体内で合成できないアミノ酸必須アミノ酸と呼びます。
必須アミノ酸全9種類を食事から摂取しないとヒトの体は維持できません。

その他の11種類は、非必須アミノ酸(可欠アミノ酸)と呼ばれ、体内で必須アミノ酸や糖質などから合成されます。

必須アミノ酸のうち、ロイシン、イソロイシン、バリンの3つは分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれ、筋肉での代謝が活発なことから、トレーニング用のサプリによく用いられます。
肝硬変の患者の栄養バランス調整など、医療でも重要な物質です。3

次章ではアミノ酸の代謝(分解、合成からエネルギーになるまで)について解説つつ、各アミノ酸の特徴についてまとめていきます。

 

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アミノ酸代謝のきほん

たんぱく質の目標摂取量

厚労省は、たんぱく質の摂取推奨量を約55g/日と定めています。

 たんぱく質の摂取推奨量(g/日)
 年齢男性女性
1~2歳2020
3~5歳2525
6~7歳3530
8~9歳4040
10~11歳5050
12~14歳6055
15~17歳6555
18歳以上6050

日本人の食事摂取基準(2015年版)より

摂取推奨量ということは、人が1日で消費するアミノ酸の量とイメージしましょう。
消費とはエネルギー生産尿による排泄などによって体外に出てしまうということ。
毎日捨てられる分のアミノ酸(50g〜)を食事から摂取する必要があります。

もちろん体格年齢運動量によって変わりますので、あくまでも『目安』と捉えましょう。

 

たんぱく質の分解と合成

食事由来のたんぱく質、アミノ酸の流れを図示しました。

たんぱく質は胃液や腸液などでアミノ酸まで分解され、小腸から吸収されます。

バラバラになったアミノ酸は、血中や各貯蔵組織に蓄積されたあと、約180gが筋肉や各組織のたんぱく質として合成し、同量が分解されて新陳代謝が回ります。

図のように、体には一定量のアミノ酸が常に蓄積されており、これをアミノ酸プールと呼びます。
ただし、アミノ酸には特定の貯蔵組織はなく、体全体がアミノ酸の貯蔵組織というイメージです。
とはいえ、大きなエネルギーが必要な筋肉、特に骨格筋にプールされる遊離アミノ酸は全体の50%以上を占めるとされ、メインの貯蔵組織となっています。

また、スポーツ用プロテインなど、最初からアミノ酸として摂取すれば効率的ですが、その反面、アミノ酸濃度が急激に上昇するため、各組織(特に肝臓)への負担が大きくなることに注意しましょう。
食材から栄養素を摂取することで、”分解のちに吸収”と、代謝に時間をかけ、臓器への負担を軽減します。これはどの栄養素も同じですね。

 

アミノ酸代謝と臓器:たんぱく質を食べたあとの体内では…

少し難易度が上がります。筋トレやダイエットに興味のある方はご覧ください。

腸管から吸収されたアミノ酸は、まず血管に乗り、肝臓を経て全身の組織に送られます。
アミノ酸の代謝(=たんぱく質・非必須アミノ酸の合成や、エネルギー生産)は全身で行われますが、特に代謝量が多いのが、小腸(腸粘膜組織)肝臓腎臓、そして筋肉です。

組織おもな代謝アミノ酸※
全身すべて
腸粘膜グルタミン
グルタミン酸
肝臓分岐鎖アミノ酸以外
腎臓グルタミン
筋肉分岐鎖アミノ酸
アラニン、アスパラギン酸
グルタミン酸
※代謝のメインとなるアミノ酸で、他のアミノ酸代謝ができないわけではない

小腸から吸収されたアミノ酸のうち、グルタミン、グルタミン酸の多くは腸粘膜組織で代謝されます。

腎臓はグルタミンを代謝する過程で、グルタミン酸とアンモニアを生成します。
生成したアンモニアは、血中のpHを調整したり、尿として排泄されます。
アンモニアは害というイメージですが、一定量は血液に不可欠です。

肝臓はほとんどのアミノ酸代謝が可能ですが、BCAAと呼ばれる分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)はほとんど分解されません。
肝臓にはこれらのアミノ酸を分解する酵素が少ないのです。

分岐鎖アミノ酸を代謝するおもな組織は筋肉(骨格筋)です。

高たんぱく性の食事により、血中アミノ酸の濃度が上昇すると、生物の体は平衡を保ちたがる(=アミノ酸濃度を下げたい)ため、各組織でたんぱく質の合成が促進されます。4
逆に、早朝など絶食時間が長いときは、血中のアミノ酸濃度が低下し、たんぱく質の分解が促進されます。

トレーニングをして筋肉が損傷した直後に、プロテイン、アミノ酸を摂取するべきなのは、筋肉が修復、増強されるタイミングで血中アミノ酸の濃度を上げる(=たんぱく質(筋肉組織)の合成を促進)ためです。

この点について、次章で補足します。

 

BCAAと筋肉

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プロテインやサプリメントで『BCAA』という言葉をよく聞きますが、これは『branched-chain amino acids(分岐鎖アミノ酸)』を指します。
BCAAは必須アミノ酸の一種で、ロイシン、イソロイシン、バリンを指し、化学的に分子構造が分岐している(そのまま)アミノ酸です。

BCAA筋肉たんぱく質における必須アミノ酸の30%以上を占めるとされています。
ただし、BCAAは食事性たんぱく質に含まれる必須アミノ酸のほぼ半数を占めるという報告もあり、日常的に不足しがちなわけではありません。

既述の通り、BCAAは骨格筋が代謝の中心であり、運動中はエネルギー生産のため大量に消費されます。
また、BCAAのうち、ロイシンは筋肉たんぱく質の合成を促進することが報告されています。5

運動前後でBCAAを摂取する目的は、骨格筋でのエネルギー代謝を効率良く回し、回復を促すことに加え、筋肉たんぱく質の合成、増大を促進するためです。

 

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たんぱく質と栄養バランス

たんぱく質はアミノ酸に分解された後に吸収され、各組織で利用されます。
(これを理解しているだけでコラーゲンの摂取がナンセンスとわかりますね)

しかし、たんぱく質は数千、数万個のアミノ酸(20種類)から構成されているため、食材ごとにアミノ酸の割合は変わります。
そのため、特定の必須アミノ酸が少ない食材など、栄養価の高いたんぱく質と低いたんぱく質が存在します。
すなわち、たんぱく質の栄養価とは(必須)アミノ酸のバランスなのです。

最後に、各たんぱく質の摂取方法とアミノ酸バランスについてまとめて終わりにします。

 

アミノ酸スコアのきほん

アミノ酸バランスの指標として、WHOはアミノ酸スコアという概念を提唱しています。

『食材のたんぱく質において窒素1gに占める特定のアミノ酸の量が、基準値と比較してどの程度の割合か』というわかりづらい指標ですが、まずは以下だけ覚えておいてください。

  • アミノ酸スコアが100(%)の場合、その食材は、必要なアミノ酸を理想の基準値以上の割合で含む
  • アミノ酸スコアは、項目の中で基準値に満たないアミノ酸の最低値(%)を指す

※メチオニンとシステイン(含硫アミノ酸SAA)、フェニルアラニンとチロシン(芳香族アミノ酸AAA)は1項目として扱う

例えば、ロイシンの含有率が基準値の50%しか含まれていない食品では、他のアミノ酸の割合が基準値を超えていても、アミノ酸スコアは50になります。
また、基準値ギリギリでも大幅超過でも、100以上は切り捨てなので、スコアは同じ100となります。6

たんぱく質を摂取する場合、このアミノ酸スコア100%を維持するように食材を選ぶのが理想ですが、あまり神経質になる必要はありません。

アミノ酸スコアと食材の選び方について、以下で簡単に解説します。

 

動物性たんぱく質と植物性たんぱく質

食品名スコア第一制限
アミノ酸
牛乳100
鶏卵(全卵)100
豚ロース100
大豆100
サケ(生)100
精白米65リジン
食パン42リジン
みかん50ロイシン

基本的に、動物性たんぱく質はすべてアミノ酸スコア100となっています。

牛乳や、たまご、肉類はたんぱく質の分解効率も良い(後述)ため、これらを摂取すれば、アミノ酸もバランス良く摂取できます。
しかし、動物性たんぱく質だけを食べていればOKというわけではありません。動物性食品中心のレシピは脂質の過剰摂取につながるからです。また、ビタミンやミネラル、食物繊維の不足にもつながります。
その点、低脂質、低糖質、高たんぱくであるささみは優秀ですね。

また、精白米のアミノ酸スコアはリジンを除けば100になります。
アミノ酸スコアは、一番含有率が少ないアミノ酸(第1制限アミノ酸)に引っ張られるため、アミノ酸スコアが低い=すべてのアミノ酸含有率が低いと錯覚しやすいことに注意です。

たんぱく質だけを見れば動物性たんぱく=良質たんぱく質と言われます。
しかし、視野を広く、他の栄養素のバランスも含めて、植物性食品も組みこんだレシピが重要ですね。

 

おまけ:食品加工とPDCAAS(たん白質消化吸収率補正アミノ酸スコア)

最後に少しだけ難しい話をしますので、興味がある人はご覧ください。

良質なたんぱく質はアミノ酸バランスにつながりますが、たんぱく質がアミノ酸として分解、吸収されにくい食材もあります。
アミノ酸をバランス良く含む食材でも、50%しか分解できない場合、吸収量は摂取量の半分になってしまいます。

この点を補足した指標が、たん白質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)です。
これはアミノ酸スコアに、たんぱく質の分解・吸収率をかけたものです。

例えば牛肉のアミノ酸スコアは100ですが、たんぱく質の分解率は92%とされており、PDCAASは0.92となっています。
大豆に関しては、アミノ酸スコアは100であるものの、無処理の状態ではPDCAASは0.8程度、大豆たんぱくとして精製した場合でやっと1.07と報告されています。

硬い生の状態か、バラバラになっていたり、たんぱく質が部分分解されてから摂取するか…
どちらが分解・吸収されやすいか、イメージできると思います。

家庭でここまで注意してレシピを作る必要はありませんが、栄養成分表示に書かれている量がそのまま全量吸収されるわけではないということは頭に入れておきましょう。

 

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おわりに

みるおか
たんぱく質とアミノ酸について、幅広く解説していきました。
筋トレやダイエットなどで話題に上がりやすいアミノ酸ですが、何にしても単一の食材で栄養を摂取すると、どこかで体にガタがきます。
レシピ作りが苦痛にならない程度に、多くの食材を使って料理を楽しみましょう!

脚注

  1. たんぱく質はポリペプチドの各所で結合、ねじれが生じ、立体的な構造となることで酵素や筋肉、抗体などとして機能する。アミノ酸が多数連結しているものの、直線状で立体的な構造となっていない状態ではポリペプチドと呼ばれることが多い。
  2. ※経口免疫寛容と腸内細菌叢|ヤクルト中央研究所(2007)など
  3. ※肝硬変患者はBCAAの血中濃度が低下するとともに、AAA(フェニルアラニン、チロシン)が増加し、重症化につながる。そのため、低タンパク食でAAA濃度を下げつつ、BCAA製剤を個別に投与する実例がある。(肝硬変に対する栄養サポートのエビデンス|分岐鎖アミノ酸(2010)など)
  4. ※食後は血糖値が上昇し、インスリンの分泌が促進される。インスリンは血糖値の低下とともに、各組織へのアミノ酸吸収も促進する。たんぱく合成の促進は血中アミノ酸濃度の上昇とインスリン両者の相乗効果によるもの。
  5. ※分岐鎖アミノ酸(BCAA)の生理機能(Nutrition Review|Nestle Nutorition Counsil 2009)など
  6. 100%以上が切り捨てられることを問題視して、DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)という指標も出ているが、あまり浸透していない。
  7. ※Ghulam Sarwarら(1997)など