腸内環境・乳酸菌

ヨーグルトメーカーの使い方と注意点を食品研究者が解説してみる

投稿日:2017年3月18日 更新日:

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ヨーグルトメーカーを使って自作ヨーグルトを使る人が増えてきましたね!

僕ももちろんMYヨーグルトメーカーを持っています。
ヨーグルトを作るだけではなく、複数のヨーグルト種菌を混ぜてみたり、カマンベールチーズを試作したり、ほぼ実験器具として活躍しています。
ホエイを切ってギリシャヨーグルトを作ることもできますよ!

自家製ヨーグルト好きの方には手放せないヨーグルトメーカーですが、家庭でヨーグルトを作りにも『リスク』があります。

ヨーグルトメーカーを使っている人のSNSやブログ記事を見ていると、ヨーグルトメーカー…というより、乳酸菌(微生物)を扱う上での注意点を理解していない人が多そうな印象を受けました!

今回は、ヨーグルトメーカーを使う前に覚えておきたい注意点を1つ1つ解説していきます。
自作ヨーグルトにチャレンジする前に必ず目を通してくださいね!

ヨーグルトメーカーの基本的な使い方

まず、僕が使っているヨーグルトメーカーを紹介します。
アイリスオーヤマのリーズナブルなヨーグルトメーカーです。
とはいえ、1℃単位で温調できて、ホエイを切るザルも付いているので、水切りギリシャヨーグルトも作れます。ヨーグルトのレシピもついてくる充実ぶり!

詳しくはこの記事で解説してるのでヨーグルトメーカーを探してる人はチェック必須!

それではまず、このヨーグルトメーカーを使いながら、基本的な自作ヨーグルトの作り方を注意点とともに解説していきます。

 

予備加熱

まず牛乳を密閉したまま人肌程度(〜40℃)まで予備加熱します。
この工程は説明書には書かれていません。
というのも、低温でスターターを添加してセットすると、発酵温度に達するまでの間に微生物汚染のリスクが高くなるからです。
密閉状態で高温にすると気層が膨張しますが、この程度の温度では破裂の危険はまずありません。

 

スターター添加

牛乳や乳酸菌に触れる用具はすべて殺菌しておきます。
牛乳は栄養分が高く、雑に扱うと食中毒の危険も高くなります。

食中毒の予防と症状・病原菌まとめ:『加害者』にならないための必須知識をプロが解説するよ

殺菌の観点から見れば、煮沸消毒がベストなのですが、一般的なヨーグルトメーカーの素材は熱湯はOKでも煮沸はNGなので、火を止めた熱湯にしばらく浸漬しておきました。
お手持ちのヨーグルトメーカーのスペックを確認しましょう!

 

今回、スターターにはダノンビオを用いました。粉末タイプのスターター乳酸菌もあります。
ヨーグルトをスターターに用いる場合は、牛乳の5〜10%程度の添加量で十分です。
1%程度でも問題なく乳酸菌は増えますが、家庭では微生物汚染のリスクが高いので、多めに入れて発酵時間を短くします。
乳酸菌が増えて酸性になれば、カビや大腸菌の増殖リスクはかなり低くなります。

 

スターターを入れたらよくかき混ぜます。
かき混ぜるスプーンは牛乳に触れる柄の部分まで熱湯をかけておきましょう!

 

発酵

スターターを入れたら、素早く封をしてヨーグルトメーカーにセットします。
この状態で4時間ほど発酵させると、牛乳が凝固し、ヨーグルトが完成します!

 

出来上がりの確認

無事できましたね!
今回は一晩(約8時間)置いておいたので、かなりがっちり固まっています。

 

液体の酸度が測れるpH試験紙できちんと発酵できているか確認します。
今回はpH4.2程度でしょうか。一晩置いておいたので、市販のヨーグルトより少し酸っぱめですね。
マイルドなヨーグルトが好きな人は、pH4.8程度で止めると酸味がかなり控えめになります。
添加量と発酵時間を変えてベストな条件を探してみましょう!

pH試験紙はAmazonなどで簡単に手に入ります。アナログな方法ですが、お手軽なので食品メーカーでも用いられていますよ。
ヨーグルトメーカーを使う場合、pH4.5前後を細かく測れる試験紙が必要です。
味覚に自信がある人は自分の下で判断しましょう。
ヨーグルトができた後はすぐ冷却しないとどんどん酸度が上がります。少し余裕を持って発酵を終了し、冷蔵庫で保管しましょう。

このヨーグルトメーカーでは他にもギリシャヨーグルト納豆、少し頑張れば各種ナチュラルチーズも作ることができます。

次の章ではヨーグルトメーカーや乳酸菌を扱う時の注意点を細かく解説していきます。

 

ヨーグルトメーカーの注意点

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腐って当たり前!『牛乳と微生物汚染』について

そもそも、メーカーで製造されるヨーグルトは、牛乳の殺菌からスターター添加、発酵まですべて閉鎖系で完結します。

牧場などの設備が小さい工場では、タンクを開放してスターターを添加することがあります。
しかし、それでも厳密に発酵時間や温度を管理し、汚染のリスクを限りなく小さくしています。
家庭で作る自作ヨーグルトのように、牛乳を開封して、素手でヨーグルトを…なんてことはありえません。

下記に主な汚染菌と温度の関係を載せておきます。

温度 乳酸菌 主な汚染菌
22~28℃ カスピ海ヨーグルト
L.lactis ssp. cremorisなど
カビ
酵母
37~43℃ 通常のヨーグルト
L.bulgaricus
S.thermophilusなど
大腸菌
黄色ブドウ球菌

粘性の高いカスピ海ヨーグルトは比較的低温で発酵させます。
25℃前後が推奨されていますが、この温度はカビが最も生えやすい温度でもあります。
また、30℃前後で増えやすい酵母も汚染源になりやすいです。
前者はカビ臭が、後者はアルコールの香りが発生するのが特徴ですね。

また、普通のヨーグルトは40℃前後で最も発酵が進みます。
この温度はほとんどの細菌の最適温度です。
病原性大腸菌黄色ブドウ球菌などが主な汚染菌です。
黄色ブドウ球菌は雪印乳業の集団食中毒の原因菌でした。

これらの微生物が少し増えたところで、普通の大人が食べても問題無い場合が多いです。
『なんか味が変だなぁ』程度…。悪くても下痢になるだけでしょう。
そもそも、これらの菌は空気中や人体に生息している常在菌ですからね。

問題は、乳幼児や免疫力が低下している人が汚染したヨーグルトを食べてしまった場合です。
食中毒が発症、重症化しやすく、思わぬトラブルにあうことも!?

まず頭に入れておくべきなのは、一般家庭で作る時点で『腐って当たり前』みたいなもの。
牛乳は糖・アミノ酸・ミネラル・水分ほとんどの微生物にとって理想的な培養環境です。牛乳を拭いた雑巾が時間も経たずに腐臭を発するのはご存じでしょう。

『マニュアル通り作ったのに腐った!』なんて人がいるかもしれませんが、それはただのクレーマーです。
自作ヨーグルトにはリスクがあります。
その前提で、汚染させない自家製ヨーグルトの作り方を解説していきましょう!

 

汚染させない作り方のカギは『温度』『添加量』『発酵時間』

リスクはあると入っても、自作ヨーグルトの魅力には勝てませんよね!

ここではヨーグルトを作るときの衛生管理について解説します。
まずはヨーグルト工場のタンクと、ヨーグルトメーカーの違いを簡単に図示しました。

ヨーグルト工場では、密閉されたタンクでヨーグルトを作ります。
周りは温水や蒸気などが通る空間で覆われ、素早く冷却・加温されます。
材質も熱を非常に通しやすい金属です。
牛乳はスターター乳酸菌を入れるまで撹拌され、目的の温度に達してから添加、静置されます。

対して市販のヨーグルトメーカー…
図の通り、熱源と牛乳の間に『空気』と『紙パッケージ』がありますよね。
紙も空気も熱を通しにくいため、設定温度と牛乳の実温度には大きな差ができてしまいます。
壁面付近は設定温度でも、真ん中は低いまま…

前章の通り、普通の乳酸菌は40℃付近で増殖します。
しかし、中心が冷たいと、乳酸菌よりもカビや酵母が生えやすい状態になってしまいます。

これは42度に設定されたヨーグルトメーカーに、1Lの牛乳パックをセットして温度の継時変化を記録したものです。
ご覧の通り、冷たい牛乳スタートでは、設定温度に達するまで2時間以上かかるのです。

そのため、

  • スターターを入れる前に加温
  • スターターヨーグルト(または粉末)を十分に添加

を守り、乳酸菌が素早く増殖できる環境を作りましょう!

みるおか
家庭用のヨーグルトメーカーだと、工場より温めにくいのはしょうがない!
できるだけ乳酸菌が生えやすい環境を整えてあげましょう!

 

pHと凝固:振動させるとヨーグルトにならないよ

ヨーグルトが固まるのは、乳酸菌が出す乳酸によって牛乳の酸度が上がり、牛乳中のタンパク質が凝固するからです。1

牛乳が凝固するときに、水分(ホエイ)や油分などもまきこむため、静置した状態では綺麗な形に固まります。
しかし、タンパク質の凝固が進んでいる最中…特に最も不安定なpH5.5〜5.0で撹拌してしまうと、液状になるだけではなく、ホエイとヨーグルトが完全に分離してしまいます。

『固まってるかなー…』と見たくなるのはわかりますが、スプーンでかき混ぜたりすると、良い形のヨーグルトはできませんよ!

 

普通のヨーグルトと『飲むヨーグルト』の違い

飲むヨーグルトは、普通のヨーグルトを撹拌・破砕して液状にしただけです。2
飲むヨーグルトをスターターにしても、普通の固形ヨーグルトにしかなりません。

飲むヨーグルトは、固形ヨーグルトをミキサーにかけるだけで作れますが、前章の通り、pHがしっかり下がる前に撹拌するとホエイと固形分が分離するので注意しましょう。

 

自作ヨーグルト永久機関は不可能?乳酸菌と『ファージ感染』

乳酸菌を何度も植え継いでいると、突然全くヨーグルトが出来なくなることがあります。
もしかすると、そのヨーグルト…あるいはあなたの部屋がバクテリオファージに汚染されている可能性があります。

バクテリオファージは、細菌に感染するウイルスです。

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出典:東京大学丹羽研究室

感染対象は細菌なので、人体には危険はありませんが、大きな問題が…。
そう、乳酸菌が全く生えなくなるんです。

ヨーグルト工場でも、同じスターターをずっと使用していると、工場全体にファージが増殖し、発酵不良になることがあります。

対策は、スターター乳酸菌を定期的に変えること。
基本的にファージの感染対象は限定的で、菌株を変えてしまえば感染できません。
乳製品メーカーは、ファージ対策に同じ機能を持つ乳酸菌株を多数持っており、スターターを入れ替えながら製造しているのです。

ファージに感染しない限り、ヨーグルトの永久機関は不可能ではありません。
ただし、一般家庭で植え継ぐときは、大腸菌やカビを巻き込みながらヨーグルトを作っていることを忘れないように…
急に腹を下しても完全に自己責任ですよ!

 

R1、LG21を自作…?『機能性ヨーグルト』をバカにしすぎです

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前章の通り、乳製品メーカーは菌株を入れ替えながらヨーグルトを製造しています。
製造前にはスターターの機能性チェック…例えば、

  • 増殖速度
  • 酸の発生量
  • 機能性成分の生成量
  • 乳酸菌の胃酸耐性

などなど…全てが現行品と同等以上であることを確認してから使用します。

それに『生きて腸まで届く』プロバイオティクスで知られるビフィズス菌は、酸素が無い状態でしか増殖できないので、一般家庭ではそもそも培養できません。
メーカーでは気層部を窒素に置換するなど、完全に酸素をシャットアウトした状態で発酵させています。

明治のR1やLG21などの乳酸菌は、万は下らない株の中からエリート株を選抜していますが…エリートの維持というのも難しいのです。
植え継ぎしてるうちに落ちこぼれの乳酸菌に戻ることも…

機能性ヨーグルトを植え継いで大量生産!なんて野望も良いですが、自作したヨーグルトに市販品と同じ機能性は期待できないと思いましょう。

5分でわかる乳酸菌の健康効果と『乳酸菌ビジネス』のリアル

 

おわりに

ヨーグルトメーカーは有能ですよね。

簡単にヨーグルトが増やせますし、少し良いアイテムを買えば、ギリシャヨーグルトや様々な発酵食品が作れます。
腐りやすい牛乳をヨーグルトにして『保存食化』するという考え方もありますね。お通じにも良いですし。

注意点を守りつつ、しっかりと腸活していきましょう!

脚注

  1. pH5.0〜5.5あたりで乳たんぱく質の”等電点”となり、水に溶けなくなる。
  2. 工業的には高圧粉砕機(ホモゲナイザー)を使用してザラつきを除いています。
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