栄養成分解析

食用油の科学:5分でわかる植物油の種類と正しい使い方

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料理をするとき…特に炒め物や揚げ物に欠かせないのが『油』です。

大豆油、キャノーラ油、ごま油、オリーブオイル…
これらは全て植物由来の食用油です。
動物油とは脂肪の構造(脂肪酸の種類)が違い、健康機能も数えきれないほど明らかにされています

さて、これら食用油の種類と特徴をしっかりと区別して使っていますか?

植物油の風味や健康効果、有効成分は加熱の仕方で無意味になってしまうこともあります。
この記事では、料理に必須な『油の科学』を簡単に解説しつつ、植物油の正しい使い方や種類ごとの特徴を解説していきます。

 

植物油脂の基礎知識

【参考資料】食用油脂入門(日本食糧新聞社)、脂質の機能性と構造・物性: 分子からマスカラ・チョコレートまで(丸善出版)、植物油辞典(日清オイリオ)農林水産省/すぐにわかるトランス脂肪酸農林水産省/油糧生産実績調査

そもそも油とは?

植物油脂の構造を図示しました。

油脂は2つの物質、グリセリン脂肪酸という物質が結合した物質です。

グリセリンには脂肪酸が結合できる箇所が3つあり、グリセリンと3つの脂肪酸が結合したトリアシルグルセロールという物質が油脂の正式名称です。”トリ”は化学的に3を意味します。
体内では、この状態がいわゆる『中性脂肪』になります。

脂肪酸には多くの種類があり、長さや構造が違います。
グリセリンに結合する脂肪酸のバリエーションによって、融点(液体になりやすさ)や劣化速度体への蓄積性分解性などが変わります。

脂肪酸にもたくさんの種類がありますが、最も大きな分類は『飽和脂肪酸』『不飽和脂肪酸』です。

脂肪酸の中に『二重結合』という部分が存在すると、不飽和脂肪酸と呼びます。
不飽和脂肪酸は、いわゆるやわらかい油で、常温で液体になりやすく、植物油の主成分でもあります。
リノール酸リノレン酸DHAEPAなどは健康食品でも聞きますが、これらも不飽和脂肪酸の1つです。
リノール酸やリノレン酸は人間が合成できない必須脂肪酸で、食物から摂取する必要があります。特にリノレン酸は体内でのDHAやEPAの合成に必須です。
また、悪玉コレステロールの低下といった健康機能が認められています。

飽和脂肪酸は、二重結合がない脂肪酸で、劣化しにくい安定な構造です。不飽和脂肪酸と違い、融点が高く、常温で固体です。
動物油(ラード等)などは飽和脂肪酸が多く含まれています。お菓子の食感など、物性を整えるため、製菓原料にも使われます。

ちなみに『サラダ油』という言葉がありますが、これは特定の油脂を示しているのではなく、低温でも清澄な液体を保つ植物油の総称です。JAS規格では『0℃で5.5h以上透明性を保つ(JAS規格)植物油』と定められています。
以前は油の精製技術が未熟だったため、サラダ油は高価な商品でしたが、現在店頭に並んでいる、炒め物、揚げ物用の食用油はほぼ全てサラダ油の規格を満たしています。

 

食用油の役割:なんで料理に油を使わないといけないの?

植物油の役割は大きく分けて『栄養』『加熱』『加工』の3つです。

まずは栄養について。
脂質は炭水化物、たんぱく質と並んで必須の栄養素です。
g当たりのカロリーが高いため、肥満には注意しましょう。
また、脂溶性のビタミンなどを溶解し、一緒に食べることで体内への吸収を促進します。

サプリは甘え?ビタミン全種類の効果(過剰摂取、欠乏症)と正しい摂取法を解説してみる

次が食用油の『加熱』機能について。
水の沸点は約100℃です。そのため、煮物などは(沸点上昇を考慮しても)最大100℃での調理になります。
対して、油を使えば、100℃以上での高温短時間調理が可能になるので、調理の幅が広がります。
表面の水分を飛ばしたカラカラの揚げ物は油が必須ですよね。

最後が食品加工です。
食用油の中でも、飽和脂肪酸が多い固形油脂は、パンや菓子に練りこむ、あるいは表面に塗布することで、食感の改善ツヤ出しに使われます。
コンビニなどの業務用おにぎりでは『炊飯油』が必須です。
専用の植物油を添加してご飯を炊くことで、ご飯が油で薄くコーティングされ、炊飯釜へのこびりつきを防止し、水分の蒸発を防ぐことで米のモチモチ感とツヤを長持ちさせます。

他にも、香り付けのごま油やオリーブオイルなど、様々な食シーンで油が使われます。

 

油が不味い!キッチンがベトベト!油の『劣化』を防止する方法

食用油は基本的に微生物汚染されないため、常温で長期保存できますが、時間が経つにつれ油も徐々に劣化します。

イラストのように、油の劣化は『酸化』『加水分解』『重合』での3つに分かれます。

食用油に酸素が反応して酸化すると、異臭の原因になります。
また、酸化した油は他の油脂の酸化も促進するため、負の連鎖となります。
とくに不飽和脂肪酸で起こりやすい現象です。

食用油が加水分解すると、グリセリンから脂肪酸が分離してしまいます。ヒトが体内で油を分解する過程と同じです。
加水分解は飽和脂肪酸で起こりやすい現象です。
酸が分離するため、油が酸っぱくなるとともに、加熱時に異臭を引き起こします。
また、他の油脂の酸化も促進します。
油中の脂肪酸濃度は『酸価』という指標で表され、小売店の惣菜等などでは、厚労省によって上限が定められています。

油脂の重合は、不飽和脂肪酸同士が結合してしまうことです。
重合が進むと人体で消化しにくくなります。
また、油の粘度を上げるため、フライ時の泡立ちキッチン周りの油汚れの原因になります。
ギトギトになって取れなくなった油は、重合して粘度が上がった末路です。

酸素がある環境で放置…すなわち普通に保管しているだけでも徐々に劣化しますが、特に油に水が入った状態で加熱すると劣化速度は速くなります。
加熱した油に水を入れる人はいないでしょうが、野菜炒めやフライも水と油を加熱しているのと同じです。フライ油の使い回しは最低限にしましょう。
フライ時に泡立ちが見られたり、酸化臭、酸っぱい風味が出始めたら油交換のサインです。

 

食用油に含まれる副産物と有効成分

ナタネゴマ大豆オリーブなどの油糧原料には様々な健康機能成分が含まれますが、それらのほとんどは油の精製過程で除去されます。
そのため、一部のオリーブオイルやごま油などは精製度を落として機能成分を保ったまま製品化します。
さらなる健康効果が期待できるとともに、風味が豊かになりますが、精製度を落とすことで、劣化しやすくなったり、不純物が残ることで精製油では起こりにくい微生物汚染につながることもあります。
それぞれメリット、デメリットがありますね。

さて、この章では、食用油に含まれる主な有効成分を解説していきます。

 

ビタミンE

ほとんどの植物油に含まれますが、特に大豆油オリーブオイルには多く含まれています。
脂溶性のビタミンで、正式名称はトコフェロールと言います。

抗酸化物質として油の酸化を防止するとともに、体内でも活性酸素の除去などに役立ちます。
抗酸化物質は、ターゲットの代わりに自分が酸化されることで、細胞や油のダメージを軽減します。
様々な抗酸化物質がありますが、ビタミンEは防サビ剤の油に添加されることもあります。サビは金属の酸化が原因ですからね。

 

植物ステロール

肥満や動脈硬化の原因となるコレステロールと、植物油に含まれる植物ステロールを混同するひとがいますが、全く違います。

植物ステロールの構造はコレステロールと似ていますが、植物ステロールは人体にほとんど吸収されないだけではなく、コレステロールの吸収阻害効果を持つので、血中コレステロールの低下機能がある健康素材です。
よく、植物油に『コレステロールゼロ!』と書かれていますが、そもそも植物油は全てコレステロールゼロ(ごく微量で表示基準以下)なので、特別なことではありません。

 

レシチン

菜種(キャノーラ)や大豆に多く含まれますが、製造工程でほとんど除去されます。
副産物として精製され、天然由来の乳化剤として食品添加物にも使われています。
チョコレートパンなどに使われ、ハーゲンダッツなどのアイスクリームにも添加されています。

 

カロテノイド

植物の色素の1つで、油がうっすら黄色いのはこのカロテノイドの働きです。

光を吸収し、油を劣化させる要因になることもありますが、ビタミンの前駆体になったり、抗酸化作用を持つ健康機能物質でもあります。

 

セサミンとオリザノール

セサミンごま油に、オリザノール米油に含まれる抗酸化物質です。
サプリメントのセサミンは主にごま油から精製されています。
オリザノールは抗酸化作用に加えて体内での抗炎症作用などに関する研究が進められています。

 

トランス脂肪酸は本当に危ない?

不飽和脂肪酸には構造の違いによって、シス型とトランス型に分かれます。
自然界の脂肪酸は通常シス型ですが、”水素添加”という加工方法によりトランス脂肪酸が生成してしまうのです。
水素添加は、不飽和脂肪酸を無理やり飽和脂肪酸に変える加工方法です。現在はあまりこの方法は用いられていませんが、マーガリン等に使用する油は、水素添加油の方が物性的(硬さや融点等)に適しているのです。

過剰摂取により悪玉コレステロールの増加(による心疾患等)を引き起こすとされ、厚労省では摂取基準を総エネルギーの1%未満と定めています。
平成18〜19年に大規模な調査が行われ、上限を超える油脂関連製品が散見されましたが、現在は各社削減に取り組み、家庭向けの精製植物油では検出限界以下となっています。

 

食用油の種類と特徴まとめ

ここでは、一般過程で使われる食用油の種類と特徴をまとめていきます。
なんとなく選んでいた油を食シーンに合わせて選べるようになります。

加熱調理用の油

キャノーラ油

キャノーラ油は品種改良された菜種が原料の油です。

最もポピュラーな植物油の1つで、低温で固まりにくく、無味に近いため、揚げ物から炒め物ドレッシング(生食用途)まで幅広く使われます。油の風味を主張させたくない料理に重宝されます。
扱いやすく、劣化速度も遅いので、一般のご家庭で迷ったらとりあえずキャノーラ油を使ってください。

 

大豆油

キャノーラ油よりもコクと香りが強い油です。風味特性からレストラン等で多く使われます。
菜種油と比べて、オメガ-6、オメガ-3などの必須脂肪酸が多く含まれていますが、その反面、劣化しやすいため、短期で使い終わることが望ましいです。

 

とうもろこし油

原料はとうもろこしの胚芽(とうもろこしの実の根元にある硬い部分で芽が出る場所)です。
大豆油と脂肪酸組成は似ており、ビタミンEが多い食用油です。
大豆油と同様コクと香りが強い油ですが、また違った香りであるため、好みで使い分けると良いでしょう。

 

パーム油

アブラヤシという植物の果実が原料です。
飽和脂肪酸が多いため、とにかく劣化しにくく、主張しない風味が特徴です。

常温で固体なのがネックですが、業務用のフライ油ショートニングに重宝されています。
ギリギリ常温で液体になるように、アブラヤシの品種改良によって不飽和脂肪酸を増やしたパームオレインという種類もあります。

食用以外にも石鹸等の化成品にも使われ、世界で最も多く生産されている植物油です。

 

その他の加熱調理用油

ひまわり油(オレインリッチなど)の特徴はキャノーラ油に近く、あっさりとした風味で素材の味が引き立ちます。紅花油も淡白な風味が特徴です。
とはいえ、一般家庭のフライ用途では誤差範囲です。
キャノーラ油と同様に、主張しない風味なのでドレッシングなどの生食用にも最適です。

米油は高価ですが、豊富なビタミンEに加え、抗酸化物質ののオリザノールも含まれます。
酸化劣化に強く、コクもあるので業務用で人気です。

 

生食に適した油

オリーブオイル

オリーブオイルは特徴のある香りパスタサラダに使われる最もポピュラーな生食用油です。
調理特性だけではなく、健康効果も注目されている油ですよね。

酸化しにくい不飽和脂肪酸であるオレイン酸を多く含み、血中コレステロールの減少に寄与します。
ビタミンE以外にも種々の抗酸化物質(一部のフェノール化合物など)を含み、健康効果に関する研究が数多く進められています。

オリーブオイルは精製度によって分類されます。
原料から遠心分離等で余分な水分や不純物を除いただけの油が、エクストラバージンオリーブオイルです。
オリーブオイルの有効成分が残っており、香味油として使われます。
パスタなどの炒めに使用することもありますが、これらの風味や有効成分は加熱により失われるので、加熱調理の場合は最後に添加しないと十分効果を発揮できません。
十分に精製していないため、他の精製油より劣化しやすいことにも注意しましょう。
雑菌汚染や油の酸敗に加え、風味の劣化が激しいので、なるべく短期間で使い切りましょう。

精製したオリーブオイルはピュアオリーブオイルと言われます。
エクストラバージンよりも透き通った色ですが、緑が強く残っており、一般的なサラダ油よりも精製度は低いため、ビタミンEなどの有効成分は一般的な食用油よりも多く含まれています。

 

ココナッツオイル

ヤシの核果(≒種)が原料です。

アブラヤシの種が原料の場合、パーム核油とも言います。
ほとんどが飽和脂肪酸で、常温で固体です。パーム油よりもさらに硬い油です。
脂肪酸の長さが短い”中鎖脂肪酸”を多く含むのが特徴です。

中佐脂肪酸は長鎖脂肪酸(=普通の植物油の脂肪酸)よりも分解されやすいため、エネルギーとして燃焼されやすいく、脂肪として蓄積されにくい油なのです。
食べる油として美容意識の高い人にも人気ですね。

 

ごま油

ごま油もオリーブオイルと同様、圧搾して油分を回収した後に、不純物だけ取り除いて製品になります。
ゴマを焙煎してから精製するため、香りが強く、旨味のある風味が特徴です。
風味が豊かで炒め物などの隠し味に重宝されますが、オリーブオイル同様。有効成分は加熱により失われるので、加熱調理の最後に加えるのが基本です。

 

その他の油

亜麻仁油は必須脂肪酸のリノレン酸が豊富なので栄養面に優れますが高価です。
保湿や便秘に効くと言われますが、どんな油でも水分の蒸散は防げます。
また、消化管で吸収されなかった油はウンコのキレを良くするので便秘に効くことがあります。
亜麻仁油に限った効果ではありません。

ブドウ油グレープシードオイル)はブドウの種子が原料です。不飽和脂肪酸の割合が高く、ビタミンEも多く含みますが、何かに突出しているわけではなく中途半端な印象です。
果実らしいすっきりした風味淡白な味が特徴です。

エゴマ油はシソ科植物の種子が原料です。
リノレン酸約25%は植物油トップクラスです。
生産量が少なく高価であるため、流通量は多くありません。
加熱用とにも使いやすいですが、劣化しやすいため生食使用をおすすめします。

 

おわりに

油=脂肪、デブというイメージが強いかもしれませんが、植物油は摂取量摂取方法に注意すれば、コレステロールの低下機能など、健康的に食べられる食材です。

ひと口に植物油脂といっても種類も使い方も様々です。
せっかく様々な効果があるのに、全く発揮できない使い方をしている人も。

とはいえ油は油ですから、食べ過ぎてデブになるのは当たり前。
健康は野菜や運動を交えたトータル管理が基本ですね。気をつけていきましょう。

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