5分でわかる加工食品の原料原産地表示制度|それ…本当に国産?

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2018年9月に食品の『原料原産地』表示が新しくなったのを知っていますか?

…そもそも”原料原産地”というフレーズを知らない人も多いかもしれません。
言葉のまま、食品の材料の原産地の話です。
例えば、ミックスサラダに使われているレタスが国産か、アメリカ産かなど…
産地偽装などを防ぐために、あらゆる食品には『原産地表示』に関するルールが決められています。

今回変わったのが、加工食品の原料原産地に関する法律。
一見、メーカーに対する規制が厳しくなったように見えますが…果たして…?

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そもそも加工食品と生鮮食品の違いは?

食品は大きく『生鮮食品』『加工食品』に分かれます。

生鮮食品は、リンゴや肉など、農畜産物そのままの状態を指します。
生鮮食品を加工、製造したものが加工食品なのですが、ここでカンタンに定義をまとめておきましょう。

区分許される作業
生鮮食品選別仕分け、分類すること
(卵を大きさ別に選別するなど)
調整加工に満たない作業を指す
(レタスの千切り、あじのたたき、同種のフルーツ盛り合わせなど)
加工食品加工原料の性質を生かしつつ、新しい性質を付けたす作業
(合挽き肉、異種のフルーツ盛り合わせなど)
製造加熱や混合などで原料とは本質的に違う性質になったもの

牛肉のロース&カルビ盛り合わせや、イチゴまとめセットなど、同じ農畜産物の盛り合わせは生鮮食品になります。
ちなみに、生鮮食品の場合、基本的には国産であれば都道府県を、輸入品であれば原産国を表示すればOK!(品目ごとの細かいルールは省略)
これが、オレンジとリンゴのフルーツセットになると加工食品に。ややこしいですね笑

パッケージングされた菓子やレトルト、調味料などは全て『製造』しているのでもちろん加工食品です。

今回ルールが変わったのは、加工食品の原料原産地…
新制度の内容とメリット、問題点などについてまとめていきます。

 

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加工食品の原料原産地制度|変更点&問題点のまとめ

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【参考】
新たな原料原産地表示制度に関するQ&A (食品表示基準Q&A(平成29年9月1日消食表第410号)より抜粋) 
食品表示基準一部改正のポイント(消費者庁)

細かい規則、個別表示については参考資料をご覧ください。

 

これまで表示義務は『一部』だけだった

これまで、原料の原産地表示が義務となっていたのは、以下の26品目でした。

カテゴリー品目
農産加工品乾燥品、塩蔵品、茹で&蒸したもの・あん、
異種混合品、緑茶飲料、いり豆・落花生、
もち、黒糖とその加工品、こんにゃく
畜産加工品調味品、ゆで&蒸したもの、炙ったもの
衣をつけたもの、異種混合品
水産加工品乾燥品、塩蔵品、調味品
ゆで&蒸したもの、炙ったもの
衣をつけたもの、こんぶ巻き
※個別ルールがある品目漬物、野菜冷凍食品、うなぎ加工品、カツオ削り節

26品目といっても、だいたい内容がかぶっていますが、食品表示法ではこう決められていました。

原材料表示といっても、全ての材料で表示しないといけないわけではありません。
原材料のうち、最も多い生鮮食品、かつ全体の50%を占めていなければ、原産地表示は不要というのがこれまでの法律。
また、原産国は割合順に並べますが、3ヶ国目以降は”その他”と表示してもOKです(これは新制度でも同じ)。

例えば、

  • じゃがいも60%:にんじん30%:玉ねぎ10%の野菜ミックス
    この場合、ジャガイモの原産地を表示。
    (例:じゃがいも(国産、アメリカ産、その他)、にんじん、たまねぎ)
  • じゃがいも40%:にんじん30%:玉ねぎ30%の野菜ミックス
    この場合、どの原材料も50%を超えていないので、原料原産地表示は不要。

もちろん、義務ではないだけで”表示が望ましい”ことに変わりありません。
次の章で、このルールがどう変わったのか、カンタンにまとめます。

 

全加工食品で原料原産地表示が義務に

原料原産地表示を全加工食品に拡大

50%を超えていなくても”最も割合が多い原材料”が対象となる

 

これが原料原産地の新しいルール。
これだけ見れば、表示規則が厳しくなっただけのように見えます。

『あらゆる加工食品で、一番多い原材料の原産国、製造国を表示する。』

シンプルにいうとこれだけ。

しかし、実は問題だらけの新制度…
もう少し原料原産地表示について掘り下げていきましょう。

 

新制度のメリット・デメリット

新ルール策定の理由として、消費者庁は…

消費者は、原料の原産地について、これまでよりも充実した情報を得ることが可能となり、新たな制度が消費者の自主的かつ合理的な食品選択に大きく貢献することを期待しています。

引用元:長官による談話|新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する情報(消費者庁)

と宣言しています。

震災による風評被害、さまざまな偽装事件などで国産ブランドの力が下がりつつありますが、まだまだ『国産』というフレーズは強いのが現状。
(”特定の国、地域の食品を食べたくない”という人の方が多いでしょうか…)
野菜コーナーでも『〜が作りました!』という商品が割高なのに売れています。

原料にしろ産地にしろ”透明性”にこだわる人が多い日本。
消費者にとって、原産地表示の新ルールはメリットが多いように見えます。

しかし、この新制度は食品メーカー、特に中小企業は騒然としているのが現状です。

まず話題に挙がるのが包装コスト。
デザインや印刷など、初期費用が大きいパッケージ変更は、特に中小企業にとっては大きなダメージに。
これまで原産地表示がいらなかった菓子やジュースなどのメーカーは、全商品のパッケージを新しくしなければいけません。
品目が多いメーカーほど、その労力、コストは高くなります。
このため、猶予期間として2022年4月までに対応完了すればOKとなっています。

これらのコストが”価格”として消費者にのしかかるのは必然ですね。

さて、メーカーにとっては負担が大きい新制度ですが、新ルールは厳しいだけではありません。
『全加工食品が対象』となったために、逆に産地不明になってしまう可能性も…?

 

産地不明?新ルールの抜け穴『大括り表示』とは

もっとも割合の高い原料が加工食品の場合は、”りんご果汁(国内製造)”など、製造地表示を認める

原産国が多く、割合が頻繁に変わる場合は”じゃがいも(輸入品)”などの大括り表示を認める

 

新制度で追加されたのが『製造地表示』『大括り表示』です。

例えば、ある食品の材料で最も割合が多いのが、しょうゆや味噌などの加工食品だった場合…
あらゆる産地を表示しなければならなくなると、まず原料メーカーにヒアリングし、その原料メーカーにヒアリングし…と大変な労力がかかります。
この複雑さ、労力を減らすために、今回の制度では、表示対象の原材料が加工食品(中間加工原材料)の場合は、製造国を表示すればOKとなりました。

すなわち『輸入品だけを使って日本で製造したりんご果汁』が原料原産地の表示対象となった場合、りんご果汁(国内製造)と表示されることになります。

また、畜肉やじゃがいも、大豆などの農畜産物が材料となると、世界各国から輸入していることも珍しくありません。
輸入国が多いだけではなく、毎年使用割合が変わるとなると、その度にパッケージを変更するのはあまりにもコストがかかります。

そのため、”使用割合順で2ヶ国目まで”という原則はありつつも、表示が難しい場合は、

  • 豚肉(国産 又は カナダ産)
  • トマト(輸入品)

といった表示が可能となります。
多数の国から輸入し、毎年割合が変わる品目をひとくくりに『輸入品』としてOK。これが『大括り表示』です。
これではどこの国で獲れた原材料なのかわかりませんね。

誤認防止として、

「又は表示」をする場合は、過去の一定期間における使用実績又は今後の一定期間における使用計画における対象原材料に占める重量の割合(一定期間使用割合)の高いものから順に表示した旨の表示を付記する。

とはありますが、誤認防止として機能するのか微妙では?
うーむ…

厳しいのか甘いのかわからない新制度。
議論の中で施行されたこともあり、トラブルが多発しそうな気配です…

 

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おわりに

今のところは猶予期間ということもあり、新表示に切り替わったメーカーはほとんどありません。
品目が多い大手は原料調査にとりかかったり、他メーカーの様子見…と手探り状態。

しかし、新制度の『穴』を見ると、企業負担の対価として、ユーザーにとってプラスになるのか微妙なところ。
逆に、新ルールの曖昧さを逆手に取った『産地不明』や『産地偽装』が増えるのでは?という意見もあります。
このご時世、わざわざ包装にコストをかけなくても、表示はネットや企業サイト中心にまとめるのもアリだと思いますが…
”原材料と原産国はすべて(QRコード)で公開しています”みたいにすれば企業も消費者もwin-winでは?
美味しいのは案件が増えそうなコンサルタントだけだったりして…。

気になる人は、これから包装の『裏面』もたまには見てみましょう。
いろんな疑問が沸いてくるかも?それでは!