もう食レポで悩まない!味と香りを正しく伝える専門用語とコツ

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『味や香りを伝えたいけど、どう伝えれば良いかわからない!』

今日はそんな人のためのお話…

食品メーカーで働き始めて数年、いろんな食品を食べてきました。
食べることが仕事ですが、その目的は『おいしい食品』『売れる食品』を作るため。
食べるだけではなく、しっかりと『評価』しないといけません。

テレビやWEBメディアでは『食レポ』と言いますが、我々の世界では『官能評価』と言います。
さて…食レポと官能評価の違いはなんでしょう?

食レポはいわゆる個人の感覚です。
他のアイテムと比較することはありますが、1人の感覚、感情による主観的な評価がベースです。

対して、官能評価に求められるのは客観的な評価
『おいしさ』を数値化し、統計処理し、比較しなければいけません。

最近は、成分分析によって『おいしさの指標』を数値化する分析機器も活躍しています。
しかし、まだまだ食品業界で最後の決め手となるのはヒトの舌ですよ!

こういった食品の味を伝えるためのハードル『何を指標にするのか』ということ…
例えば、ヨーグルトのおいしさを表現するために必要なのは、酸味甘味、あとは…?

今日は『食品の味と香りを表現する専門用語&フレーズ』とともに、それらを正しく伝える『表現の作り方』について解説していきます。

 

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こんなにあるの?味と香りの専門用語とフレーズ

おいしい、まずい、甘い、シャキシャキ、フルーティな、トロトロ、つるつる…

味や香りを表す言葉といえば何を思い浮かべますか?
こういった官能評価用語は、食品メーカーや団体によって体系化されつつありますが…

厚い・脂っこい・粗い・泡状の・いがいが・糸を引く・薄い・重い・かくばった・かすかす・かたい・塊状の・かみこたえがある・カリカリ・顆粒状の・軽い・切れやすい・くちゃくちゃ・クリーミー・ぷちぷち・ふっくら…

〜中略〜

弾力がある・みずみずしい ・ちりちり・つぶれやすい・歯ごたえがある・口ざわりがよい・口どけがよい・くちゃくちゃ・しなしな ・ぷりぷり・乳状の・ぬめりがある・ねばつく・ふるふる・膜状の・まとわりつく・まろやか・水飴状の・ぷるぷるの・濃厚な・糊状の・密な・ふわふわ・歯切れがよい・ふんわり…

おいしさを評価する用語|日本調理科学会(2008,早川)
日本語テクスチャー用語の体系化と官能評価への利用|食品科学工学会(2013,早川)

めちゃくちゃ多い!

ここに挙げたのは『食感』をあわらす用語のほんの一部。
食感だけでも450を超える語句が定義されています。

『味』や『香り』にも専門用語はたくさん。
酢やめんつゆで有名なミツカンは、ダシのおいしさを表現する評価用語を体系化しています。

【出典】だしを表現するための評価用語をフレーバーホイールに体系化|研究開発トピックス|ミツカン

日本の食シーンに広がるフレーズを拾い上げたらキリがありません!

まずは『汎用性が高い食レポ用語』『使い方を間違えやすいフレーズ』を覚えましょう。
最低限の表現ですね。

ただ、大事なのはそういった表現を『自分の言葉』に落とし込むこと!
この記事では、自分で食レポ用語を考えるスキルをマスターする所まで解説します。

 

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カンタン!味&香りの用語を使いこなす方法

数百、数千にわたるフレーズを使いこなすのは無理。
無理やり”それっぽい”用語を使っても薄っぺらいだけで、何も伝わりません。

味の表現は『味覚の要素』を意識すればカンタンです!

この章では、おいしさの構成要素とともに、汎用性の高い&間違えやすい語句について解説します。

 

基本の5味+α

まずはわかりやすい『〜〜味』から。

甘味・酸味・苦味・塩味・旨味

この5つが基本味(五味)となります。
プラスアルファとして、辛味渋み(収斂味)が挙がります。
”苦味””渋み”がよく混同されますが、渋みは味よりも触覚に近いイメージです。
なんとなく喉にひっかかる、違和感がある、イガイガする…といえばわかりやすいでしょうか。
お茶などの例外を除き、あまりポジティブな意味では使われませんね。

いずれもイメージしやすい味ですが、『旨味がある』という表現だけ”ゆらぎ”があります。
旨味はイノシン酸(かつお節の旨味)やグアニル酸(シイタケの旨味)、グルタミン酸(昆布の旨味)の味…
いわゆる『味の素』のような風味を指します。

コンブなどのダシ汁をそのまま飲むと全然美味しくないですが、ここに塩や醤油を加えると一気に美味しくなりますよね。
旨味は、このように他の4味と合わさって、味に深みを与えます。

 

コクとキレ?プロっぽいけどわかりづらい2つの表現

基本5味に関係するのがコク
『コクがある』も非常にあいまいな表現…

それもそのはず。コクは厳密に定義されていない表現なのです。
”コクがある”商品を扱う食品メーカーは数え切れないほど。
しかし、どれも『コクを自分なりに解釈』しているだけです。
ビールやスープなど『この味がウチの食品なりの”コク”です』と言っているに過ぎません。

”コク”は人それぞれ…
こういうと扱いづらそうですが、コクにも『最低限の条件』があります!

コクの共通要素をまとめると…

  • 複数の味で構成されている
  • 中味から後味にかけて味をしっかり感じる
  • 持続して感じる味である
  • 香りもコクの構成要素となる

です。
まとめると『味の深みと広がり』がコクの共通認識です。
…まだわかりづらいですね…少し絵を描いてみましょう。

このように、味の感じ方は様々です。

コクはこんなイメージ。
コクは複数の食材が組み合わさってできる味なのです。

  • 色々な味が良い感じに組み合わさっている
  • 食べた時に、いろいろな味や香りが後味まで残り続ける

これを満たせば、ラーメンでも、ビールでも、ジュースでも、お菓子でも『コクがある!』と言ってOK!

また、酸味苦味炭酸などの刺激味が強く、後味がスッキリしているような場合は『キレがある』と言います。
キレ後味が残りにくい味で使われます。

ただ、コクとキレは反対語ではありません
色々な味が組み合わさってるのに、後味が引かない場合など、共存することもあります。
あくまで感覚と程度の問題なので、自分の思った通りにレポートしましょう!

 

困ったら『比喩』と『擬音』が最強!香りや食感を表すフレーズ

苦味はカフェイン、酸味はクエン酸など、基本となる味覚は決まっています。
香りに関しても、『魚の腐った臭い=トリメチルアミン』など、臭いと化合物が関連付けられます。

しかし、香りと食感…
この2つの用語には共通点があります。

それは『比喩』と『擬音』が多用されること。

例えば『香り』の表現。
体系化されているように見えて、『◯◯臭』『◯◯の香り』の◯◯に入る語句はなんでも良いのです。

食品では複数の香りが組み合わさっています。
個人の感覚で『◯◯のような香り』と表現するしかありません。

食感も同じですよ。

硬い・柔らかい・弾力・とろける・歯ごたえがある・液状・クリーミー・脂っこい…

このあたりの基本語句はすぐ浮かぶでしょう。
それ以外は、

シャキシャキ・パリパリ・ふわふわ・ボロボロ・トロリとした・シャバシャバ・プチプチ…

擬音でごまかしているにすぎません。

香り、食感の専門用語が多すぎるのは、個人が感じた『比喩』や『擬音』をムリヤリ体系化しようとしているからです。
困ったら、自分が感じたまま、『◯◯のような香り』と、そして自分の口で感じた『音』をリアルに伝えるのがベストです。

 

これで食レポがプロ仕様に!『味の変化』を表現しよう!

食レポをワンランク上げる表現…それが『味の変化』です。
『どんな味か』を書く人は多いですが、みなさん味覚の変化を無視しがち…

例えば、基本5味だけでも、味と時間の関係は全然違います。

  • 甘味【持続型】:ゆっくりと長く続く(甘味料以外)
  • 酸味【先味型】:素早く出てすぐ消える
  • 苦味【持続型】:ゆっくりと長く続く
  • 塩味【先味型】:素早く出てすぐ消える
  • 旨味【中味・後味型】:後から出てくる

などなど…

【出典】エリスリトールと高甘味度甘味料の併用による応用技術|三菱ケミカルフーズ株式会社

これは砂糖、甘味料の味の経時変化をグラフ化したものです。
単純に『甘い』の強弱だけでは味をイメージできないとわかるでしょう。

感じる味、食感、香りが、

  1. 口に入れてすぐ(先味)
  2. 噛み始め(中味)
  3. 飲み込む前(後味)
  4. 飲み込んだ時(喉ごし)

でどう変化するかを表現しましょう!
読者が味をイメージするためには必要不可欠です。

『するどい酸味を甘味がしっかりカバー。バランス良く、食べやすい味に仕上がっています。』

一見、小ぎれいにまとまった食レポに見えます。

では、

『食べた瞬間に広がる鋭い酸味。それをすぐに甘味がカバー。バランス良く、食べやすい味に仕上がっています。』

どちらが”味をイメージ”しやすいか…
ちょっとした工夫で伝わり方は一気に変わります。

 

味と香りを正確に伝える指標のつくり方

味や香りを表現する『用語』がわかりました。
最後に『味・香りを伝える』ことを目的に、言葉の選び方についてまとめていきます。

自分の感じた味をそのまま伝える。これが食レポの大前提!
それでも言葉のチョイスに迷った時は、その食品の『美味しい要素』『不味い要素』を分けてみましょう。

例えば、お肉だと、

ポジティブな要素は、ジューシー(肉汁)旨味柔らかいなど。
ネガティブな要素は、焦げ臭い硬い安っぽいなどが挙げられます。

『おいしさの要素』が整理できたら、比較できる食品と比べて、特徴のある要素を選んでレポートしていきましょう。

今日食べたステーキがおいしかった…
それは他店のステーキと比べて、どの要素が違っていたのか?

食レポだけではなく『レビュー』の基本となる考え方です。

 

もしブログやWEBメディアなどで食レポに悩んでいる方は、忘れずにこちらの書籍もお読みください。
『美味しいをどう表現するか』について、わかりやすく体系的にまとまっている良書ですよ!

 

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おわりに:『正しい食レポ』ってなんだろう?

さて…最後に質問があります。

今日の記事を参考に作った『ラーメン店レポ』の例を見てください。

今日は家系ラーメンで有名な◯◯に来ました!
トロトロのスープ表面に浮いてる脂肪の膜が印象的ですね…。
口に入れた瞬間に旨味と海鮮の香りが口いっぱいに広がります!
コクのあるスープに、店舗独自の細麺がうまくマッチし…

はい、うまくまとまっています。
では、以下の表現だとどうでしょう。

今日は家系ラーメンで有名な◯◯に来ました!

うまい!

食べた瞬間の脂と旨味がとにかくヤバい!

食べないとマジで後悔します!とりあえず1回食べるべき!

どちらが良いでしょう?
『味を的確に表現』しているのは前者ですが、『なんだか食べたくなる』のは後者ではないですか?
後者なんて情報量はほぼゼロです。笑
それでも後者がなんか良い感じに見えるのは、ラーメン店の客層に合っている、そしてキャラクターがあるからです。

比較記事や落ち着いた店舗、スペック評価では、この記事のような表現が好まれます。
同じ食レポでも、雰囲気感情と併せて伝えたい場合は、後者の方が読まれるでしょう。

正しい食レポは『読者が何を知りたいか』で決まります。
レビューアイテムや自分のキャラクター、記事ごとに工夫しながら『読者が食べたくなるような表現』を追求してみてくださいね。
それでは。