コレステロール『摂取上限』が消えたの知ってた?正しい食事制限について知見をまとめてみた

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肥満とともによく語られるコレステロール
ダイエットのために食事制限の対象としている人も多いでしょう。

実はこのコレステロールの食事からの摂取基準上限が2015年に撤廃されたことを知っていましたか?
もしかしてコレステロールは食べ放題!?果たして…

今日は各栄養素の摂取基準を定めている厚労省のデータを中心に、コレステロールと摂取基準についてまとめていきたいと思います。

 

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コレステロールの基礎知識

【参考文献】厚生労働省|日本人の食事摂取基準、植物油脂入門(日本食糧新聞社)、改訂増補タマゴの知識(幸書房)など

そもそもコレステロールとは?

コレステロール『ステロール』と呼ばれる化合物の一種です。

人間でも血中コレステロール濃度が上がると、動脈硬化や、各種成人病などの原因となることが知られています。

コレステロールは動物性の物質で、植物にはほとんど含まれていません。
植物の細胞にはフィトステロールという別のステロール(いわゆる植物ステロール)が含まれており、これらはコレステロールを低減する健康機能物質として知られています。

  • コレステロールは動物性のステロールで健康を害する物質
  • フィトステロールは植物性のステロールで健康機能物質

こういう極論みたいなイメージがありますが、コレステロールは細胞の構成物質でもあり、一定量は人間の細胞に必須です。

【植物ステロールについて】サラダ油コレステロールゼロ!の意味

キャノーラ油や大豆油、オリーブオイルなど、いわゆる植物性の油では、よく『コレステロール0!!』というフレーズがPRされています。
そもそも植物細胞にはコレステロールがほとんど含まれていないので、植物性食品はどれもコレステロールゼロ*1です。

コレステロールの有無で油を選んでいる人は、植物油ならどれもゼロなので表示を気にする必要はありません。

キューピーコレステロールゼロのマヨネーズを販売していますが、これは動物性食品である『卵』からコレステロールを除去して作ったものですね。
製造工程で工夫されています!

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コレステロールと食事摂取基準の改正について

改正内容の概略

厚生労働省は『日本人の食事摂取基準』を策定しており、研究機関や主要論文などから各栄養素の摂取量、上限量などを定めています。
これは約5年おきに改定され、最新のデータが反映されます。

さて、コレステロールの摂取量ですが、2010年度版では、

  • コレステロールの摂取目標量の上限は成人男性が750mg/日、成人女性で600mg/日
  • 摂取目標量の下限は無し

と定められていました。当時、WHOなどは1日300mg未満を目標量としていたこともあります
1日タマゴは2個までなどと聞いたことがあるでしょう。*2

これらのコレステロールの摂取基準量が『日本人の食事摂取基準2015年度版』から全て削除されたのです。

コレステロールは体内で合成できる脂質であり、12~13 mg/kg 体重/日(体重 50 kg の人で 600 ~650 mg/日)生産されている。
摂取されたコレステロールの 40~60% が吸収されるが、 個人間の差が大きく遺伝的背景や代謝状態に影響される。
このように経口摂取されるコレステロー ル(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールの 1/3~1/7 を占めるのに過ぎない。
また、コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に少なく摂取す るとコレステロール合成は増加し、末梢への補給が一定に保たれるようにフィードバック機構が働く。
このためコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない。

引用:日本人の食事摂取基準|脂質|食事性コレステロール(p125)

この文章に集約されていますが、重要なところを読み取っていきましょう。

対象は『食事性』コレステロール

摂取上限が消えたと言っても『コレステロールは体に悪くない』という意味ではありません。
食事摂取基準ですから、定められているのは経口摂取するコレステロール…
すなわち、食事から摂るコレステロールの量に関して、制限量が消えたということです。

コレステロールの『摂取上限』が撤廃された理由

摂取上限が消えた理由を、ものすごく簡単に書くと以下の通りです。

  1. コレステロールの吸収量には個人差がある。
  2. コレステロールは体内でも作られ、全体で見れば食事から吸収される割合は低い。
  3. 過剰に摂取しなければ、コレステロールの吸収量が多くても、体内での合成量が減り、バランスが取れる。

これらの知見により、『食事からコレステロールを摂取しても、血中のコレステロール濃度には即座に影響しない』と結論付けたのです。

そして1番重要なのは『いくら摂取しても問題ないというデータが得られた』わけではなく『摂取量を決めるのに十分なデータが得らなかった』ということです。

ずいぶん後ろ向きな決断ですが、この点をもう少し掘り下げてみましょう。

じゃあ、なぜコレステロールの上限値があったの?

繰り返しますが、コレステロールの健康への影響が否定されたわけではありません。

厚労省の同資料にもありますが、血中のLDLコレステロール…すなわち悪玉コレステロールが、動脈硬化や心疾患を引き起こすという研究結果は多数報告されています。
これらは、主に鶏卵や動物肉など、コレステロールを多く含む食品を対象に臨床データを集めています。

穴があったのは、コレステロールという単独物質の摂取量ではなく、卵など『食品』の摂取量を基準としていたことです。

ハワイ在住日系中年男性を対象とした観察研究では、食事性コレステロール摂取量と虚血性心疾患死亡率との間に有意な 正の相関を認め、325 mg/1,000 kcal 以上の群で虚血性心疾患死亡率の増加を認めている。
ただし、 飽和脂肪酸摂取量で調整されていないため、コレステロール摂取自体が原因ではなく、同時に摂取 する飽和脂肪酸摂取量が影響している可能性がある。

すなわち、コレステロールを多く含む食品と心疾患などの相関は見られたが、コレステロール以外の物質が影響していることを否定できなかったのです。

どんな栄養素でも過剰摂取すれば肝機能が低下するため、コレステロールの過剰摂取が健康に悪影響を及ぼすことは明白です。
しかし、人間はコレステロールを摂取した分、体内での合成量を低下させる機能を持っている(フィードバック制御と言います)ため、コレステロールの摂取上限量を定めるに至らなかったのです…。

コレステロール値は健康のバロメーターだが…

  • 高LDLコレステロール血症=LDLコレステロール値が140mg/dℓ以上
  • 低HDLコレステロール血症=HDLコレステロール値が40mg/dℓ未満
  • 高トリグリセライド血症=中性脂肪(トリグリセライド)値が150mg/dℓ以上

この3つの数字のどれかでも範囲を超えたら、脂質異常症と診断されます。

引用:はじめよう!ヘルシーライフ | オムロン ヘルスケア

コレステロールの”摂取基準”が撤廃されても、血中濃度と健康への影響については大きな変更点はありません。
ただ、コレステロールの摂取量だけが取りざたされたことにより、過度にコレステロールを下げるような治療が行われたこともあるようです。

 

既述の通り、コレステロールは体に必須の物質である前提で、悪玉コレステロールの蓄積は血管に悪影響を及ぼすという『バランス』を忘れてはいけません。

悪玉コレステロールを下げるにはどうしたら良いの…?

病気と判断されれば、投薬によって血中のコレステロール濃度などを調節する治療が行われることがあります。スタチンは高コレステロール血症の治療薬としてノーベル賞(生理学・医学)にもつながりました。

では、日々の生活ではどうすれば良いのか…食事制限しても効果があるかわからないのに…

現時点では『バランスの良い食生活、運動をキープしつつ、体内でのLDLコレステロールの過剰生成を防ぐ』ことを意識しましょう、というのが結論です。

アジやサバなどの魚類に含まれるDHAEPAココナッツオイルなどはLDLコレステロールの低減機能が見出されています。
ただし!コレステロールを下げる食品と言っても、本質は『油』なので食べ過ぎるとデブにつながります。

『これが良い!』と聞くと、思考停止でそれだけモリモリ食べる健康オタクもいますがバカです。

たんぱく質脂質炭水化物ビタミン・ミネラル、そして食物繊維
これらのバランスを守りながら、普段の食生活にアクセントとして加えないと逆効果ですよ。

ちなみに『運動』は脂質異常症の原因物質の低減と明らかな相関が見られています!(^p^)

要は走れってことだ!

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まとめ

今回(といってもだいぶ前ですが)の摂取上限の撤廃は、コレステロールの摂取量が健康に影響ないという理由からではありません。

『相関は見られてそうだけど、よく調べてみると、なんかこうバシっとくる結論が見出せなかったから、とりあえず摂取上限は定められなかった』

という宙ぶらりんな状況です。苦笑

今後、新たな指針が発表される可能性は高いため、コレステロールについて過剰に心配も期待もせず、これまで通り栄養に気をつけた食事を取っていきましょう!

*1:植物細胞にもコレステロールはごく微量含まれることがあるが、無視できるレベル

*2:鶏卵1個のコレステロール含量は約250mg