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ITでも機械でもない…マイナーな『食品メーカーエンジニア』のリアルを綴ってみる

投稿日:2017年3月16日 更新日:

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最近、WEBサービスやアプリケーションに触れる機会が多くなり『エンジニア』と呼ばれる人をよく目にします。
ブログを書いていると、本業でシステムエンジニアプログラマーWEBデザイナーとして働いている人とも関わるようになりましたね。

さて、僕は大学院を卒業してからずっと食品メーカーで働いています!
職種は『技術系』とでも言っておきましょうか。
複数の会社で基礎研究から商品開発製造ライン立ち上げ生産管理などを担当したので、どれが本職かと言われると怪しいところです…(器用貧乏?)
そもそも食品メーカーの技術系は研究費がリッチな超大手でもない限り、1人で研究から開発、現場導入まで一貫して見ることが多いんですよ。
だから、今の僕は研究者でもあり、商品開発でもあり、工場の人でもあります。

肩書きはどうとでも言えますが、どうも『エンジニア』とだけは名乗りづらい…
なんというか、名乗る勇気が無いんですよ。

大学、大学院で教授から叩き込まれた『Engineering』の概念は今も持っているつもりですが…

『食品メーカー×エンジニア』というあまり認知されていない世界…
今日は、食品メーカーで働くマイナーな『エンジニア』の話のリアルを書いていきます。

 

そもそも『エンジニア』って何?

エンジニアというと多くの人はシステムエンジニアインフラエンジニアなどの仕事を思い浮かべるでしょうか?
『でしょうか?』というのは、僕自身がまだエンジニアという言葉とIT/WEB業界を結びつけきれていないからです…
生物系の学問を学び、食品メーカーで働く中で、これらの業界の『エンジニア』達と関わることはほとんどありませんでした。

『エンジニアを名乗る勇気がない』と冒頭で話したのは、単純にキャリアが未熟だという点と、『そもそもこの仕事は”エンジニア”と言って良いのか?』という気持ちがあるからです。
文章を書くようになって、様々な業界を調べるうちに、『エンジニア』という言葉の本質がわからなくなってきたんですよね。

この記事はその思考の整理も兼ねて書いています。

さて、エンジニア(engineer)を日本語に直すと『技術者』です。
機械・電気・土木・建築などの技術者、広義には工学に携わる人を指します。

いわゆる”ものづくり”の業界で設計、開発、生産に携わる専門職であれば、エンジニアと言えるでしょう。
エンジニアという言葉を調べると、どうしてもIT/WEB業界の話が多くなってしまいますが、本来はもっと広い意味で使われている言葉です。
特に就職を控えた学生(特に文系)だと『エンジニア=IT/WEB』のイメージが強いようです。

自動車業界機械工学をイメージする人も多いですが、『食品メーカー』のエンジニアと聞いてパッとくる人は少ないでしょう(苦笑
マイナーの域を出ない食品とエンジニアリングの世界。
もう少し掘り下げていきます。

 

教授に叩き込まれた『Engineering』

少し身の上話を…。

僕の専門は食品科学…特に微生物関連の知識に寄っており、もっと広げると『バイオテクノロジー』が専門になります。
大学院でもバイオや食品工学などを学んだわけですが、当時は試験管と向き合うような研究や講義は少なく、教授からは、

『”Engineering”の視点を持て!』

と常に怒られていました。

in vitroin vivoだけで終わらすな!』*1

『どうやって”形にするか”が無いなら論文書き直しや!』

バイオ系には珍しい『実学』をとにかく意識した教授でした。
ここまでくると化学工学生物工学の話に繋がるのですが、こういう学問分野の話は長くなるので割愛しましょう。

実験レベルの結果で終わらせずに、どう工業レベルに発展させ、生産効率を上げ、実用化に見合うコストに落としこむか…
すなわち『Engineering』を常に頭に入れろというのが僕の教授でした。

『メーカー志望が多いと思うが、就活で東大に勝ちたいなら研究者じゃなくてエンジニアとして勝負できるようになれ。金を生める人間になれ。』

大学院時代に教授に言われた言葉が印象に残っています。
『”実験”だけで終わらずに、ものづくりという”金を生む”仕事をできるような思想を持て』というのが本質です。

 

食品メーカーでのエンジニアの仕事

食品メーカーエンジニアに必要な知識と業務内容

食品メーカーでのエンジニアというと『食品用の製造設備を開発する人』というイメージでしょうか。
間違いではありませんが、機械を開発するのはあくまで機械・設備メーカーです。
もちろん、設備を動かすソフトウェアも必要です。これは”メジャー”なIT系エンジニアのお仕事。

我々食品メーカーの仕事は製造機器やソフトウェアを使用して生産ラインを構築する=モノとして具現化することです。
『生産技術』『工業化研究』と名付けられていることが多いですね。

生産ラインを組み立てるには、液体の流れや性質を理解する『流体力学』や、粉体を扱うなら『粉体工学』の知識が必要です。
どんな性質の原料が、どれくらい太さの配管を、どれくらいの速度で移動するかを理解しないと生産ラインは作れません。

調味料エキスを扱う場合、抽出や膜分離に関する『分離工学』は必須ですね。
加熱や冷却、分解や合成など、高度な反応系を利用する場合は『反応工学』という分野になります。

こういった装置や反応に関する学問をひっくるめて『化学工学』とも呼びます。

他にも、殺菌、乾燥、濃縮など化学工学を食品に特化させつつ、包装や保存などにアプローチする『食品工学』や、微生物の増殖速度など生物に特化させた『生物工学』なども…(僕の専門はコチラ)
食品メーカーに特徴的なのは『殺菌』そして『保存』という概念です。
”腐りやすい”という他の業界には無いアイテムを扱っており、この工程を制御することが最優先となります。

これ以上は長くなるので、簡単に各知識のつながりを図示してみました。

このようにソフトウェアや機械系のエンジニアが開発した設備をベースに、商品として形にしていきます。
食品に限らず、化成品化粧品製薬などの消費財メーカー全体に当てはまる図ですが、それぞれ必要な知識、学問は少しずつ異なります。

僕が担当製品の製造ラインを立ち上げていた頃は、開発職の立場から現場を指揮しつつ、製造条件を細かく調整できるように、PID制御やDCSなど製造関連のソフトウェアの知識も詰め込まれました。
粉体や流体関連の学会に連れて行かれたこともありましたが、数式ばかりで何も理解できず…

ベースとなる設備、ソフトウェアを用いてプラントを組み立てるわけですから、食品メーカーのエンジニアにはスペシャリストよりもゼネラリストが求められます。
研究、開発視点を持ちつつ、熱や金属の知識、自動制御など…深い知識があれば素晴らしいですが、まずは全体をカバーできる基礎知識が必須です。

食品メーカーに求められる『バイオ系+α』が必要な技術者

食品メーカー研究開発職として働くということ:仕事内容や給料、激務度などの実情を語ってみる

ラボスケールでの研究、試作を、生産レベルまでスケールアップすることが食品メーカーエンジニアの仕事になります。
ガッチガチの研究職であっても、ココを抑えていなければ『使えない』研究者になってしまいます。

食品メーカーの技術系志望者にはバイオテクノロジーを専攻する学生が最も多いですが、彼らは昔から『就職に弱い』学生と言われます。
募集人数的に”狭き門”なのが一番の理由ですが、前章の図で示したような工業化とは別次元の知識しかないことも一因なのです。

化学工学、食品工学、分析工学、物理化学…こういった学問は業界に関わらず”工業化”という大きな括りで役立つ学問です。それだけ就職する時も門戸が広く開かれています。
しかし、バイオだけを学んできた人間が、上記に挙げた業界に求められるかというと…。

Bioengineeringという言葉もありますが、『バイオ+実学』というスタンスで学生生活やキャリアを積んでいくことが必要でしょう。

 

おわりに

僕が食品メーカーで”エンジニア的な”仕事をしていた時を振り返ろうとしたのですが、いざ『エンジニア』を調べてみると、

  • インフラエンジニア(ネットワークエンジニア)の仕事内容とは…
  • サーバーエンジニアの…(中略)…WEBサービスが…
  • コーディングとプログラミングが…

などなど…

『あれ?俺もしかしてこれまでエンジニアって言葉なんか勘違いしてた?』

と焦ってしまいました。僕の知らない単語ばかり並んでいましたからね苦笑

そもそもエンジニアという言葉自体が曖昧な表現です。
業界ごと、あるいは会社ごとにエンジニアの定義も違います。

少しマイナーな『食品×エンジニア』という世界もなかなか面白いものですよ。

まぁ、僕がエンジニアを名乗ることは二度と無いですけどね!
それでは。

*1:in vitro(試験管内の)、in vivo(生体内の)という意味。要は実験レベルで終わらせずに”実用化”を常に頭に入れろということ(たぶん)

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