5分でわかる乳酸菌の健康効果と『乳酸菌ビジネス』のリアル

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健康食品として昔から大人気のヨーグルト。

定量的なデータの裏付けがある数少ない(?)食品です。
ここ最近は『腸活』『菌活』なんてフレーズも…
腸内環境を整えて健康!ダイエット!みたいなちょっとアレな人たちがよく使っていますね。

ヨーグルト、ヤクルト、キムチなど、乳酸菌が活躍する発酵食品は、日本でも多くの人に食べられています。
とはいえ、ここ最近はメディアへの露出が先行しており『腸内環境』『風邪予防』『便秘改善』といったフレーズだけが先走っていますね。

今日は乳酸菌とヨーグルト、腸内環境、健康効果のエッセンスを解説しながら、気になるフレーズの本質を解説していきましょう!

この記事は、以下の資料、各企業HP、および筆者の経験を基に書かれています。

【書籍】腸内細菌革命(辨野義己/さくら舎)、人の健康は腸内細菌で決まる-善玉菌と悪玉菌を科学する― (光岡知足/技術評論社) など
【文献】プレバイオティクスと腸内フローラ、消化管におけるプロバイオティクス・プレバイオティクスの機能・注目点と問題点 など

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乳酸菌の基礎知識

腸内環境とヨーグルト

一番メジャーなヨーグルト摂取の目的は『便秘解消』ひいては腸内環境、腸内フローラの改善でしょう。
ウンコが腸内に滞留すると、体全体の働きが低下しますし、大腸ガンのリスクが優位に上がることも報告されています。
老廃物が内蔵にずっと溜まっているわけですから当たり前ですね。
”食物繊維”というウンコの骨をしっかり食べつつ、腸のはたらきを活性化することは大切です。

ヨーグルトは化学的、生物的どちらの視点でも便秘解消につながります。

まずは化学的な機能。
ヨーグルトはpH4〜5程度の酸性食品*1ですが、乳酸やクエン酸(レモン)、酢酸(お酢)といった酸*2は、腸のぜん動運動を活発化し、便通を促します。

次は生物的な機能。
腸内には病原性大腸菌ウェルシュ菌といった有害物質を出す悪玉菌、そして乳酸菌ビフィズス菌といった腸の調子を整えたり、ビタミン生成、免疫刺激を促す善玉菌がいます。これら腸内微生物全体を、腸内フローラや腸内細菌叢(さいきんそう)と呼びます。

ヨーグルトは腸内を酸性に傾けるので、悪玉菌が生きにくく、善玉菌が生きやすい環境を作ります。
また、ヨーグルトに含まれる糖類、たんぱく質、そして乳酸菌の死骸は、善玉菌の栄養となり、善玉菌の勢力が強くなっていくのです。

この部分を少しくわしく解説していきましょう。

腸内フローラと加齢

【参考】書籍:日本と科学と技術

これは加齢に伴う腸内細菌数の変化です。光岡知足という乳酸菌レジェンドの古いデータをグラフ化しました。

注目してもらいたいのが、善玉菌で有名なビフィズス菌(青)と、悪玉菌のウェルシュ菌(赤)です。
前者は加齢に伴い、特に老年期で減少が激しいですが、後者は逆に増加してしまいます。

ヨーグルトなどの発酵食品を継続的に摂取する(後述)ことで、加齢による腸内細菌バランスの悪化は食い止められます。

プロバイオティクスとプレバイオティクス

プロバイオティクスとは『生きた微生物を含む食品や医薬品』のうち、健康維持に貢献するものを指します。

『プロバイオティクスは腸内腐敗、腸内有害細菌の機能を抑制、および有益な腸内細菌と生体の活性化あるいは補助を示す、特定の菌種によって生産された生菌製品である』と定義するのがよいと考える。

【出典】消化管におけるプロバイオティクス・プレバイオティクスの機能、注目点と問題点

ヨーグルトヤクルトなどの乳製品や納豆などが代表的なプロバイオティクスです。
ビオフェルミンSなどの医薬品も該当します。

つまり、殺菌済みの乳酸菌飲料であるカルピスなどはプロバイオティクスではありません。
とはいえ、死菌であっても腸内の善玉菌の栄養源として、腸内フローラの改善には役立ちます。

オリゴ糖など、腸内の善玉菌の増殖を促す、または悪玉菌の生育を抑制する食べ物は『プレバイオティクス』といいます。似たフレーズですが、本質は全く違いますね。
”乳酸菌飲料(殺菌)”でも腸内環境が改善するというのは、プレバイオティクスの概念が近いですね。

腸管免疫とヨーグルト

『腸管免疫』という言葉もあるように、腸は巨大な免疫器官でもあります。

ここに特化した代表的なヨーグルトは、明治乳業の『明治プロビオヨーグルト R-1』いわゆるR-1ヨーグルトです。
『強さを引き出す』とは、乳酸菌が生産するEPS(細胞外多糖)という物質が、病原菌や感染細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞という免疫細胞を活性化することを示しています。
『インフルエンザに効く』というフレーズが先走っていますが、本質は、

『体全体の免疫を整える機能が他のヨーグルトよりも強く、結果としてインフルエンザ感染の予防にも効果がある』

というイメージです。

また、腸管免疫では異物や病原菌から体を守ると同時に、過剰な免疫反応、すなわちアレルギー反応を緩和する“経口免疫寛容”というシステムが働いています。
一部の乳酸菌は、”抗炎症作用””アレルギー反応の緩和”を引き起こす物質を生産することが解明されていますが、これは乳酸菌の生産物質が腸管の受容体を刺激し、人体内で免疫反応を調整する物質の生産を促すことが主な要因とです。

腸内環境を整えることは、免疫を整えること…すなわち、体の調子を整えることとイコールになるわけです!

 

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効果が実証されている『機能性ヨーグルト』まとめ

便秘解消、腸内フローラの改善、免疫系の調整、これらはいわゆる『ヨーグルト』ならどの商品でも期待できる共通の効果です。

『効果を実証する』ためには莫大な研究費を投入し、試験官、動物実験、ヒト試験で証明しなければいけません。
そのため、研究費に余裕のある大手乳業、飲料メーカー、あるいは大学以外では不可能です。

ここでは、ヒト試験において効果が実証され、研究報告が認められている主な機能性ヨーグルトをまとめておきます。

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(※研究報告等から筆者がざっくりと判断したグラフです。商品名の位置は効果の大小とは関係ありません。)

便秘、腸内環境、免疫賦活という基本の効果に加え、新しい健康効果が見いだされたり、これらの機能を増強したヨーグルトが『機能性ヨーグルト』です。
こう見ると免疫系に効果が偏っているのがわかりますね!

PA-3だけは少し特別。プリン体代謝を促進する珍しい乳酸菌です。

ヨーグルト=健康に良いというブランドイメージもあり、各社が免疫機能の研究に力を入れている背景も強いです。

 

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注意が必要な乳酸菌ビジネス

ヨーグルトをはじめとした発酵食品は様々な健康効果が見出されています。
しかし、『真新しい健康効果がないにもかかわらず、既存の効果をピックアップして特別な商品であるかのように見せかけている商品』も多いです。
サプリと名前のつくものは大体そうですね。高い金を出して乳酸菌サプリを飲んでいる人は率直に言うと”残念”です。

ここでは、乳酸菌ビジネスにありがちなフレーズを1つずつ解説していきましょう。

生きて腸まで届く

乳酸菌やビフィズス菌の中には、生きて腸まで届き、酸生成や代謝に直接働く乳酸菌もいます。
ダノンビオナチュレ明治ブルガリアビヒダスなどは『生きて腸まで届く』効果が立証されているヨーグルトです。

しかし『生きて腸まで届く』『腸で生きたまま留まる』は全く別の話。

基本的に”生きて腸まで届く”ことは、ウンコに含まれる生きた乳酸菌の数で証明されます。
摂取した乳酸菌が生きたままウンコとして一定数出てきたらOK!

『生きて腸まで届く』とは『生きたままウンコになる』と覚えましょう!

これらの商品の健康効果は、継続的に摂取して初めて期待できるのです。

乳酸菌ダイエット

ダイエットサプリは誇大広告かプラセボです。終わり。

ナチュレ恵などは、非摂取群と比較して内臓脂肪の低減効果が優位に高いことが実証されました。
とはいえ、そもそもヨーグルトはタンパク質と脂質、糖の塊でもあります。
(脂肪ゼロやプレーンタイプを除く)
日々の栄養バランスや食物繊維の摂取量、運動量を調整した上で、補佐的に働くだけにすぎません。

また、ヨーグルトは腸内環境を改善しますので、消化、代謝機能の活性化にも直結します。
正しい食生活を送っていれば、食べたものをキチンと分解し、エネルギーとして吸収・発散できる体作りをサポートしてくれますよ!

【結論】油食ってヨーグルト食って痩せようと思っているデブは甘えてないでとりあえず野菜食って走って泳げ。

『乳酸菌入りです』

特別な効果を持つ乳酸菌のスクリーニングは、基礎研究から莫大な期間と金額を要します。
大手乳飲料メーカーや、キリン、ネスレなどの巨大企業など、乳酸菌を自社で選抜し、独自の株を保有できる企業は限られているのです。

では、独自株を持たないほとんどの企業はどうしているのか…
答えは簡単。

乳酸菌を育てている企業から買っているのです。

デンマークのクリスチャン・ハンセンは乳酸菌スターターメーカーとして有名で、小規模の乳酸菌飲料メーカー牧場に種菌を卸しています。
数百種類の乳酸菌ストックを大量生産して全世界に販売しているのです。

『20種類の乳酸菌入り!』

企業向けに大量販売されているスターターを組み合わせれば、どんな企業でも製造できますね。
何も特別な商品ではありません。

CMで見た〜乳酸菌とか良いの?とよく聞かれますが、普通に『大手のヨーグルトでも食ってろよ』としか言えません。

ヨーグルトと乳糖不耐症

僕は乳糖不耐症で、牛乳とたくさん飲むと数時間後にはお腹がゴロゴロになります…。

ヨーグルトの場合、乳酸菌が乳糖を分解するので大丈夫という説がありますが、これは間違い!

基本的に微生物は分解しやすいものから分解するため、乳酸菌による乳糖の分解も後回しです。ほとんどの乳酸菌はブドウ糖などの単糖を積極的に分解します。
プレーンタイプなど、糖源が乳糖しかない場合は乳糖を分解しますが、牛乳のように5%近い乳糖がある場合、ヨーグルトになったところで大部分は残ったままです。

あくまでも”牛乳よりマシ”と捉えましょう。
下痢と便秘は全く違うメカニズムです。

 

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おわりに

発酵食品の機能が明らかになるにつれ、怪しげな商品もたくさん登場しましたね。

伊藤園の水素水のように、大手もやらかすことはありますが…
基本的に、金のかかる健康機能の研究は、大学や研究費のあるメーカー、国から補助金がでる公的機関しかできません…
どういったバックデータがあるか、信頼できるデータかどうか、見極める目が必要ですね。

とはいえ、ヨーグルトや乳酸菌自体には、ベースとして当記事に挙げたような効果が見いだされていることも事実です。

正しい食生活にプラスして、心身を整えていきましょう!