食品メーカー研究開発職として働くということ:仕事内容や給料、激務度などの実情を語ってみる

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僕は大学院を卒業してからずっと食品の技術系職種でキャリアを歩んできました。
理系、とくに生物・化学系専攻の大学生には人気の業種・職種です。
新卒採用はとにかく狭き門ですよね。

食品メーカーで開発していると言うと、

『毎日おいしいもの食べてるの?』

と言われることもありますが、楽しいことも、タフなこともたくさんあります。

今日は食品メーカーの”中の人”として、仕事内容や給料、学歴、ライフワークバランスなどの実情を書いていきたいと思います。

 

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研究開発職の仕事の流れ

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ここでは、研究開発職がどんな仕事をしているか、カンタンにまとめていきます。
僕の実体験をベースにしていますので、自分の希望業界と比較しながら参考にしてください。

1日の仕事の流れ

食品メーカーの開発職ではこんなサイクルで仕事しています。

時間内容
出社後メールチェック
夜間に仕掛けた分析データ確認
9:00-長時間の実験、分析は朝一で開始
9:30-研究員の試作品を試食
10:00-顧客と打ち合わせ
営業同行、商品提案など
12:00-昼食
13:00-レシピ検討&試作
16:00-研究員の試作品を試食
16:00-工場で担当商品の
生産状況を確認
16:30-実験データ回収&確認
分析機器を仕掛けて帰宅

この通り、分析、試作、工場、営業同行など、業務内容は多岐にわたります。

理系学生には『コミュ障で営業は無理だから…』という感覚で技術系を選ぶ人も多いですが、普通にコミュニケーションだらけです。
とくにB to Cメーカー(対消費者)の商品開発は、百貨店や小売、飲食店といった顧客とのやり取りがとても多くなります。
静かに仕事したいならB to Bメーカー(対企業)の方がオススメですね。
また、技術系の中でも研究に近い職種が良いでしょう。
開発は営業と同じくらい”対外的な”コミュニケーションが必要です。

このスケジュールでは試食は2回だけですが、コンビニ向けなど新商品開発のサイクルが高いアイテムでは試食の回数も増えます。
朝イチ、昼まえ、昼食後に顧客と、夕方、そして帰宅前に試食…みたいな1日もありますよ!
食品メーカー開発職なのに、食べすぎで健康診断がひどい結果になることも…

 

ライフワークバランス

研究職は営業に比べるとライフワークバランスは安定しています。
『好きなことを仕事にできている』人が多い職種だけに、メンタルを崩す人も少ないですね。
とはいえ、夜まで研究をすることもありますし、開発では外仕事も多くなりますよ。

研究職でも、三菱電機では違法残業によりスタッフが精神疾患、退職に追い込まれた事件もありましたね。(ブラック上司に当たったことが原因のようですが…)

ホワイト企業が多いと言われる食品メーカーですが、ハードな企業もたくさんあります。
せっかくなので、この業界での『危険キーワード』をまとめてみましょう。

 

入っちゃいけない!?ブラック気質な企業のキーワード

  1. コンビニ向け商品
  2. 百貨店向け商品
  3. 商社子会社のメーカー
  4. 日配品(乳製品、畜産加工品など毎日小売店に配送される商品)

まずは『コンビニ向け』の商品を扱うメーカー。
採用のメリットは大きいですが、商品の回転が早く、早ければ一週間で切られることも。
お弁当やパン、レジ前商品(フライ、ドーナツなど)、惣菜などを扱うメーカーは要注意です。
『来週までにレシピを決定して!』というスピード感は当たり前。もちろん納期は絶対です。
時間に追われながら『良いものを作る』を追求するのはハードですよ。

コンビニと同じく、百貨店向け商品もかなりキツいです。
小売バイヤーがPB商品1にかける圧力はハンパじゃありません。
毎週のようにリニューアルの依頼が来ます。
安定生産と利益率に目がくらみ、百貨店の言いなりとなっているメーカーも少なくありません。
PB品専用の工場、生産ラインを作っているメーカーもありますね。切られたらどうするんでしょう…

 

次は商社子会社のメーカー。
三菱、住友、伊藤忠など…商社から完全に独立したメーカーは少ないですが、子会社では親会社の影響をモロに受けます。
激務というより、商社の社風を引きずって成果や金額にドライな会社が多く、実績に応じて簡単に切り離されたりと落ち着きがありません。
『食品メーカーっぽい』おだやかな雰囲気を期待するとギャップが大きいでしょう。

最後は日配品。すなわち『腐りやすい』商品を扱うメーカーは、それだけ品質保証、開発、製品設計のハードルが高くなります。
製造現場もピリピリ…・
その分、スキル面、知識面ではレベルアップしやすいですけどね。
逆に、賞味期限が1年以上ある調味料メーカーなどでは、製造面でのリスクが比較的小さく、おだやかな雰囲気の企業が多い印象です。

 

狙い目はやはりB to B

既述の通り、B to Cメーカーは相手が一般消費者のため、ロジックが通じないことも多く、生産側の負担は大きくなります。

B to Bメーカーでは、既存顧客が多いことに加え『正しく有益なデータ』を提示すればすんなり商談がまとまりやすいです。
企業間の”しがらみ”など、面倒な部分はありますが、商品開発としてはやりやすいですね。

また、トラブル発生時には、相手が企業か消費者かでダメージは大きく違います。
どちらも誠実な対応が求められますが、相手が企業の場合は金銭的な負担で終わりです。
しかし、一般消費者へ波及した場合、全国からの回収に加え、SNSへの掲載風評被害&デマなど…必要以上のダメージを負うことも少なくありません。

とはいえ、店頭に自分の開発した商品が並ぶのは、B to Cならではの醍醐味!
あなたの理想のキャリアはどちらでしょうか。

 

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職種と仕事内容

食品メーカーの技術系は、職種をまたぐ仕事が多いと考えましょう。
製薬のように研究にどっぷり浸かれるのは、研究費トップクラスの大手企業だけです。
多くのメーカーでは、1人の人間が基礎的な実験から製造ラインまで携わります。
ここでは、各職種をカンタンに紹介していきます。

研究職

シーズを探す基礎研究、工業化を意識した応用研究に分かれます。
ジャーナルを書いて博士を取ることも可能ですが、最近はノウハウを特許として囲いたがる傾向が強いです。
”研究職”という言葉はとても曖昧で、実験から商品開発まで、あるいは工業化までを担う人間を『研究職』として募集することもあります。
就活では『研究職としての職務範囲はどこまでか』を聞いてみても良いでしょう。

 

商品開発職

製法検討や試作だけでは終わりません。
新製品の製造にも立ち会いますし、営業同行もします。

営業さんは実験に基づく細かいデータまでは把握できていないことが多いです。
商品の強みを理解しているようで、顧客からの質問に間違った返答をすることもしばしば…
営業職を技術的な知識でカバーするのも商品開発の大きな役目です!
”技術営業”という職種がある企業もありますからね。

 

生産技術職

生産技術職についてはこちらの記事でくわしく解説しています。

就職に困らない?化学工学専攻のリアルとは|大学生活から就職までの体験談

研究職といっても、製法のスケールアップなど、工場で仕事することも少なくありません。
東大院卒が高卒の工場長に怒鳴られ、プライドを叩き折られる光景も…(苦笑

みるおか
基礎研究だけだと社外で通用しないことがほとんどですが、工業化までできる人材はどの会社でも重宝されます。 ”視野の広い研究職”というのは常に人材不足ですからね!

 

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食品メーカー研究職と学歴

食品メーカーの研究職では学歴がモノを言います。

身もふたもないですが、これが現実です。

事務系では日東駒専クラスがスタンダードな企業でも、研究では旧帝大クラスの修士卒だらけということもザラ。
とくに、食品メーカーの研究職では、生物系の修士は求人に対して飽和状態です。

理系大学院生のリアルな就活とは!就職できない専攻と博士の闇を暴露してみる

そもそも研究職は『勉強ができる』が前提ですし、高学歴から順に採用されるのは当たり前です。

また、研究職採用では研究内容のプレゼンがありますし、実験だけしてきた高学歴は就活で失敗しやすいです。
ジャーナル掲載などの特筆すべき結果があれば別ですが、修士レベルの実績で結果が左右されることはまずありません。

計画の構築・実行、そしてプレゼンテーション能力まで含めた『研究』をしっかりこなしてきたかを見られます。

 

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食品メーカー技術系職種のキャリアプラン

給料は高い?低い?

修士卒の初任給は学卒と比べて2万円ほど高くなります。
年収カーブは事務系職種とほとんど差はありません。

そもそも、新卒から定年まで研究所にいられることは稀です。
工場の要職に就いたり、営業や品質保証部に異動したり…
よほど成果を残さなければ、研究職としてキャリアを全うできることはまずありません。

『好きを仕事に』の人も多い職種です。
中堅社員となってマネジメント業が増えてしまい、プレイヤーとして研究漬けの生活に戻るために転職する人もいます。
お金に執着がない人が多いのも特徴でしょうか。

 

結果に対する見返りは少ない?

2001年に青色発光ダイオードに関する特許訴訟があったのをご存知でしょうか?
企業が特許権の帰属を、研究者は成果に対する支払いを主張しました。

ジャーナルへの掲載、特許取得、新薬の合成…
これらの成果に対する報酬がまだまだ少ないのが日本です。
私が以前勤めていた企業では、優秀な研究者、技術者には実績に応じて50〜100万円の報奨金がもらえましたが、これでも正直かなりの優良企業。
他の先進国と比べると『おこづかい』程度なのが現状です。

良くも悪くも『横一線』の色が強い日系企業。
優秀なスキル、知識を持つ国外への流出が懸念されています。

 

技術系職種と『出世』

研究開発のトップは研究所長ですが、多くのメーカーでは途中で他の技術系職種や海外工場に異動となります。
研究1本の人材は視野が狭いとされ、役員クラスまで登りつめるのは難しくなります。
メーカーの本質である『ものづくり』『モノを売る』を経験していないことは、会社の中核を担うには大きなハードルになります。

営業部門やマーケティング、工場の立ち上げなど、他の職種を経験してスキルを身につけた人間がキャリアアップする傾向にあります。

特に商品開発職は営業や研究との関わりも強い職種です。
研究職1本で就活するのも良いですが、他の職種に異動する可能性が高いことも覚えておきましょう。

 

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食品メーカーで働きたい人におすすめのサービス

新卒の場合は、リクナビなどの大手サイトに登録し、就活を進めるのが一般的です。
ここでは”プラスアルファ”として活用できるサービスをまとめました。

【新卒向け】食品業界に就職を目指す学生のためのツール

ニクリーチ
おすすめ度★★★★★
公式サイト【リンク】人事の方とお肉を一緒に食べることで、打ち解けた雰囲気で、企業研究をすることができる
ポイントお肉を食べながら就活できる!? 社会人の生の声を聞きながら、企業と対等なスタンスで『攻めの就活』をしたい人向け。

ニクリーチは、就職支援大手のビズリーチが提供する学生向けのサービス。
大手メーカーの案件も扱っています。

『よければ、お肉を食べに行きませんか?』

エントリーシートを登録すれば、企業からこんなメッセージが届きます。
選考よりも『OB訪問』のイメージですね。もちろんお代は無料!
ここでは学生は企業からアプローチを受ける側。
しっかりアピールして攻めの就活を見せましょう。

実際に働いている方の話を聞ける機会は、業界に関わらず貴重な機会です。
ぜひ一度登録してみてください。

 

ビズリーチ・キャンパス
おすすめ度★★★★☆
公式サイト【リンク】ビズリーチ・キャンパスは「同じ大学出身の先輩に話を聞けるOB/OG訪問サイト」です。
将来のことを考え始めるタイミングで、母校の気になる先輩に話を聞いてみませんか。
ポイント同じ大学の先輩に聞けるのがデカい!待遇や給料、職場環境など『社会人のリアル』を知るならOB/OGが必要!

OB訪問は就活で最も信頼できることのひとつ。
誰でも書ける口コミサイトとは違い、本当にリアルな情報が手に入ります。

ビズリーチ・キャンパスはOB・OG訪問のマッチングサービスという珍しいメディアです。
大学別の専用サイトがあり、旧帝大、早慶、MARCHなどは、食品メーカーにもOBがたくさんいます。

『行きたい企業はあるけど知り合いの先輩がいない…』

そんな人は今すぐ登録しましょう。

 

研究職として転職するのは可能なのか?

食品メーカーへの転職を目指している人は、まずこちらの記事をぜひお読みください。

食品メーカーへの就職&転職を成功させるには?現役社員が解説する食品業界のホンネと有用ツール

食品業界の安定性や、採用の実情についてくわしくまとめています。
新卒採用やキャリアチェンジに有用なツールも解説しています。

また、どんな人材が評価されるのか、スキルや資格に絞って解説した記事がこちらです。

食品メーカーで評価される資格とスキルとは?採用担当目線で解説します

食品メーカーは、独占資格がほとんどない業界でもあります。
”やりたいこと”を明確にしてキャリアに沿ったスキルを身につけましょう。

 

研究開発職を逃した新卒が第二新卒の転職でリベンジする方法

『新卒では研究職になれなかったけど、転職でリベンジしたい』

という人はぜひお読みください。
研究職は、他の職種からの転職が難しいイメージです。
確かにハードルは高いですが、ポイントを押さえれば不可能ではありません。
早めの行動が良いキャリアチェンジのカギですよ!

 

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おわりに

食品メーカーで毎日おいしいモノを食べてばかりの商品開発職…
ウソではありませんが、それなりに苦悩も多く、キャリアプランも様々です。

お菓子総選挙など開発担当者をメディアが取り上げる機会も増えてきました。
なんといっても自分のアイデアが形となり世に出るのが醍醐味です。

大学を出ても毎日勉強の仕事ですが…それでも自分の仕事を好きな人が多い職種です。
就職活動を控えている学生、そしてキャリアチェンジを考えている転職希望者の方の参考になればうれしいです。それでは!

脚注

  1. 小売店が企画し、自社商品として売り出す形態を指す。企業ブランドの商品(NB品)と競合することに加え、製造量や仕様変更は小売先に依存する。いずれも大手〜中堅企業が委託製造していることが多い。